吉田猫次郎とNEKO-KEN相談員のブログ

中小企業再生や敗者復活に関する投稿が主ですが、ホームページとブログを区別し、ここでは幾分ユルめの内容になっています。

 

八王子自動車教習所、破産へ


Category: 企業再生・事業再生関連   Tags: ---
◆毎日新聞11月1日地方版より引用。

>> 日野市旭が丘の八王子自動車教習所(佐藤みどり社長)は31日、経営悪化を理由に教習所を閉鎖し、東京地裁に破産を申し立てることを明らかにした。約1500人の受講生は他の教習所への転校を迫られる。前払いした教習料金の返還額は不明という。(中略)
 教習所は発表文書で、「少子化による受講者減少、競争業者との激しい値引き合戦など厳しい経営環境のなか、運転資金も底をついた」と説明している。(中略)
 前払いした教習料のうち未受講分は破産手続きの配当で返金が検討されるが、「現時点での資産・負債を考えると全額返金は極めて難しい」という。
 教習所には31日も受講生が続々と来校。入り口で警備員が配布した文書で閉鎖を知って驚き、携帯電話で連絡を取り合う姿が見られた。大学4年の男子学生(21)は「他の教習所より安くて有名で、友人の紹介料までもらえたから選んだのに」。入校して1週間足らずという定時制高校4年の男性(19)は「26万円のローンの支払いは今後も続く。昨日は何事もなく受講したのに、あまりに突然すぎる」と憤っていた。【内橋寿明】
 引用元: http://mainichi.jp/area/tokyo/news/20081101ddlk13040343000c.html


◆ ・・・何を隠そう、わたしがクルマの免許を取ったのも、この八王子自動車教習所だった。1988年のことだ。わたしの場合、中大の生協で申し込んだのでいくらか学割がきき (すぐ近所なのです)、さらに自動二輪免許を既に持っていたので学科教習時間が幾分カットされ割安になり、さらに時間オーバーもなくスンナリ卒業できたので、総額14万円位で済んだと記憶している。
 この頃、教習車の半分は日産ブルーバード、もう半分はなんとベンツ190だった。そして送迎車はキャデラックのリムジンだった。嘘でも何でもない。当時はバブル全盛期。そのうえ学生の間ではクルマとバイクが大ブーム。教習所はいつも激混みだった。多摩八王子地区は教習所だらけ。その中でも、八王子自動車教習所は、他所よりも安く、交通の便もすこぶるよく、教習車はベンツで、送迎車はキャデラックという目立ちぶりだったので、それはもうすごい盛況ぶりだった。 当時八王子付近に在住、あるいは通学していた人は、一度は「八王子自動車教習所」とでっかくドアに書かれた白いキャデラックリムジンを見たことがあるに違いない。

◆ 記事によれば、10月30日までは従業員も教官も倒産のことを全く知らされていなかったらしい。30日の夜に、急遽、経営者から「31日で事業停止する」旨を告げられたそうだ。
 負債総額はまだはっきりしていないが、十億円台らしい。教習所経営としては、まあ飛びぬけて多いほうではなさそうな気がするが・・・。
 わたしがこれを書いているのは11月3日午後1時半だが、この後、11月3日午後2時に日野で債権者説明会が開かれるそうだから、そのときにいろいろなことが明確になるだろう。

◆ ネットで少し検索してみたら、どうやら同教習所は、数年前から相当深刻な業績悪化に悩んでいたらしく、姉妹校を売却整理したりしてリストラに励んでいたようだ。
 しかしいっぽうで、10月中旬頃までは新規の教習生を募集していたという。しかも最近の募集のしかたは、少しでも新規獲得数を上げたかったのか、2-3万円のキャッシュバックキャンペーンなどを展開していたようだ。これは学生サイドにはちょっと得した気分になるだろうが、経営サイドから見れば、一人入校すれば10数万円の前金が入るから資金繰りはその分楽になる。しかしキャッシュバックした分だけ利益率は減る。つまり、目先の資金繰りのための苦肉の策だったと想像できる。

◆ それにしても、一体なぜ、民事再生法やM&Aや私的整理ではなく、いきなり「破産」という結論に至ったのだろうか?
 普通に考えれば、このくらいの規模の事業を営んでいて、業界で上位にいて、ネームバリューもあり、また、教習生(=多くは学生さん)に及ぼす影響を考えれば、少なくとも「突然の破産」はまず考えないだろう。
 セオリーどおりに考えれば、ネームバリューの高さや業界優位性をウリにして他社にM&Aをもちかけて存続するとか(M&Aによる会社再建の方法は私的整理等と併用していろいろ考えられる!)、あるいは債務超過が著しくそれが適わないなら民事再生法を申し立てて存続するとか(民事再生だと負債全額免除ではなく、一部あるいは大部分免除にしかならない。教習生からの前金くらいはどうにか払われる可能性がある。また教習所経営も継続できる。目先の資金繰りも保全命令で一時停止するこことができる)、あるいは、もしどうしても「破産」を選択するなら、半年以上前から新規募集をストップして教習生に極力迷惑をかけないようにしてから破産するのが筋だろう。 それが一体なぜ、こんな形で突然の破産を!?

◆ 少ない資料をもとにサッと考えた単なるわたしの推測に過ぎないが、理由として、次のようなことが考えられるのではないかと思う。(もしかしたら見当違いで大恥かくかもしれないが、気にしないで書いてみる。)

 (1) 経営者・経営陣が、事業継続の意志を完全に失ってしまった
 (2) いくら借金が減っても、本業そのものが構造的に赤字体質から逃れられない
 (3) 民事再生などを検討したが、スポンサーが見つからない
 (4) 破産を「戦略のひとつ」に組み込んで、したたかに、次なる展開を考えている
 (5) 反社会的勢力が入り込んでしまい、収拾つかない状態になってしまった

 ざっと、考え付くのはこのくらいだろうか。

◆ 現実的なところでは、(1)(2)(3)の可能性が高いのではないか。つまり、多摩八王子地区はただでさえ教習所激戦区であり、そのうえ最近は学生のクルマ離れが著しいので、なかなか減収・減益から脱却できない。へたすると、経常利益どころか営業利益も出ない(=営業外の支出、たとえば支払利息などを払う余裕が一切ない)状態も考えられる。 もしそうだとすると、同教習所はもともと債務超過が著しいようでもあったので、「企業価値」をマトモに算定すると、「純資産」をもとに評価しても、将来生み出すであろう「キャッシュフロー」をもとに評価しても、ほとんど価値も魅力もない会社ということになり、いくらM&Aを望んでも、現状のままでは買い取ってくれる所はないだろうということになる。民事再生をやってもスポンサーが見つからず頓挫する可能性がある。となると、もはや万策尽きて、疲れ果てた経営陣は、教習所経営を断念してリセット(破産)しようという結論に至る、と。
 (注: ひとくちに「会社の価値」といっても、大きく分けて、「資産の価値」と「事業の価値」がある。どちらから見ても価値が見出せないようでは企業価値は無いに等しく、そのままでは誰も見向きもしないのが普通である。同教習所の場合、土地建物を所有していたとしてもおそらく銀行に担保に入れているだろうし、車はリースだろうし、しばらく業績低迷が続いて利益余剰金も底をついているだろうから、資産価値はほとんど無いと思われる。だとすると、残るは事業としての価値のみになる。しかしその事業も採算性が・・・)

◆ ここで、「現状のままでは」 というという部分を赤で強調したのには理由がある。 逆にいえば、現状のままでなければ、喜んで買い取ってくれる相手もいるかもしれないということだ。
 たとえば、教習所経営ノウハウに長けた同業者と合併して事業リストラ・業務リストラに励めば黒字化できたかもしれないし(1+1=2以上の効果をもたらすこともある)、プレパッケージ型の民事再生などをやれば過剰債務が大幅に軽減されて、スポンサーによる資金注入で資金繰りの問題も解消し、そのスポンサーがノウハウに長けた相手なら黒字化も可能だったかもしれない。
 それをせず、破産を選択してしまったということは、それができない何らかの理由があったのではないだろうか。そう考えると(4)(5)の可能性も浮上してくるかもしれない。

 いや、しかし、2週間前まで新規教習生を募集していたところを見ると、やはりギリギリまで起死回生を試みて踏ん張っていたのではないだろうか。(計画的な倒産なら債権者の頭数を減らしてもっとスマートにやるために、教習生には極力迷惑をかけないように配慮するはずだ。) 頑張り過ぎて、疲れきってしまって、再建に向ける意欲を失ってしまって「破産」という結論に至ったと考えるのが、やはり自然かもしれない。


・・・いかんいかん。いまマクドナルドで昼食している最中なのに、ベンツで教習を受けていた20年前を思い出して、ついまた長々と書いてしまった。もうこのへんにします。
現在14時10分。そろそろ債権者説明会が始まる頃かな?




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Comments

勉強になりました 
なる程、いい線突いてるかもしれないですね。
 
いや凄いなあ 
社長を見る限り(3)かなあと思います
結構副業で負債作ってたそうですし
しかしマックでお昼しながらここまで書けるって凄い
俺なんか「バイトの姉ちゃん可愛いなあ」って思うのが関の山だorz
 
その後どうなったのかな? 
>名無しさん

 コメントありがとうございます。
その後、集会で社長が土下座させられたというニュースまでは見ましたが、それ以上の情報はよく見ていません。わたしが書いた推測は当たっていたのでしょうか・・・? 


>タニケイさん

 どうもです。わたしは携帯はあまり好きじゃありませんが、ノートPCは病的なほどどこへ行くにも持ち歩いていまして、特に無線LANがつながる店ではついつい長居してしまうんですよ。
 また、内容はともかくとして、モノを書くのも速いほうでして、たとえばこの教習所の記事を書くのも30分とかかりませんでした。ゆっくり喋るくらいのスピードでタイプできます。内容はともかくとして・・・。

 

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プロフィール

吉田猫次郎とNEKO-KEN相談員

Author:吉田猫次郎とNEKO-KEN相談員
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【NEKO-KEN】
中小・零細企業・自営業向け事業再生コンサルタント。東京都中野区。
経営革新等認定支援機関(認定支援機関)。
末期症状の会社の倒産回避(生き残りのための応急処置)から、原因究明、デューデリジェンス、再生スキーム策定、金融機関向け経営改善計画策定支援、資金繰り改善、PL改善(黒字化)、実行支援、最後の出口へのお手伝いに至るまで、事業再生コンサルタントとしては一通りの経験と実績があります。
ミッションは「ヒト・モノ・カネの再生」。


【吉田猫次郎】
(株)NEKO-KEN代表取締役。
本名よしかわひろふみ。1968年東京生、乙女座、A型、申年、五黄土星。
著書12冊。講演300回以上。テレビ出演15回くらい。
20代のサラリーマン時代に高額の連帯保証人になり、その後、1998-2000年の脱サラ時に、借金苦・倒産危機で考えられる最悪の事態をほぼ全て体験したことがある(高利、多重、ヤミ金、怖い取立て、手形不渡り、ブラックリスト、強制執行など・・・だが自己破産はせず)。その体験記を、2001年に猫次郎と名乗ってホームページに公開したところ、思いがけずヒットしてしまい、2003年に書籍化。以後、事業再生コンサルタントに転身し現在に至る。
最近はスポーツらしいこともするようになり、2012年(44歳)から現在までにトライアスロンに8回出場、全て完走。フルマラソンも2回出場、2回完走。
嫌いな食べ物は、ダイコンと漬物。特に「たくあん」が大の苦手で、あれを食うのは、どの拷問よりも苦痛だと思う。

【相談員】
須田幸雄: CTP認定事業再生士。資金繰り改善、財務体質改善、労務、管理等に強い。

廣田守伸: CTP認定事業再生士。関西地区担当。事業再生コンサルタント歴16年以上の大ベテラン。

金久保 健: 中小企業診断士歴20数年。マーケティング、事業性評価、PL改善に強いが、事業再生コンサルタントとしても10年近い実績がある。

 
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★ このブログは長い間、吉田猫次郎ひとりで書いておりましたが、2017年8月より、3名の相談員と共同作業で投稿していきます。お楽しみに。

 
 
 
 
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