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吉田猫次郎とNEKO-KEN相談員のブログ

中小企業再生や敗者復活に関する投稿が主ですが、ホームページとブログを区別し、ここでは幾分ユルめの内容になっています。

 

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負けるが勝ち


Category: 企業再生・事業再生関連   Tags: ---
先月、知り合いが競売で家を失った。

競売で家を失うといっても、その手続き上、すぐに失うことはない。返済が遅れてから金融機関が競売するかどうかを決断するまでに早くても3ヶ月、遅ければ1年以上かかるうえ、いざ競売となって、裁判所から競売開始決定通知が来ても、そこから入札までに半年前後かかる。さらに、競落から明け渡しまでも数ヶ月間かかる。トータルで、返済が遅れ始めてから数えれば1年以上はかかる。その間、家はあなたのものだ。立ち入り禁止になるわけでもないし、赤紙を貼られるわけでもない。競売にかけられている間にも、考える時間はたっぷりあるし、やれることもまだまだたくさんある。

この人の場合、取引先の破産のあおりをくらって連鎖倒産状態になり事業資金の返済ができなくなったのが2年前で、競売開始になったのは今年の5月だった。そして家を失ったのは今年の11月初旬だった。トータルで約2年かかったわけだ。

彼は、返済不能になった自分のほうが悪いのだからジタバタしてもしょうがないと、かなり前から腹をくくっていた。また、家を所有することへの未練もなかった。解決のために専門家に何かを依頼するための資金もなかったので、余計な金と手間をかけないで、全て受け身の姿勢で、債権者のやりたいようにやってもらおうという方針に決めていた。返済もしない(したくてもできない)。交渉もしない。争いもしない。それによって起こりうる全てのことを受け入れる、と。勝ちか負けかといえば、明らかに債権者の勝ち。彼の負けだ。

でも、その結果起きたことは、

1.とおりいっぺんの督促
2.競売

それだけだった。

返済が遅れる前はたいそう深刻だったが、いろいろ情報を集めているうちに恐怖心が薄れていき、厳しい督促も競売も怖くなくなった。実際、競売でさえも、実際に経験してみるといたって淡々と進んでいくだけで、まったく怖いものではなかった。

ところで、彼は潔く金融機関に「負け」を認めて、いっさいの抵抗をせず、負けた場合のペナルティである競売を受けたわけだが、競売が終結するまでの約2年間、ただボケーッと過ごしていたわけではない。彼は自分の本来やるべきこと、すなわち「本業」を忘れなかった。いっさいの雑念を捨てて、督促や競売の恐怖を恐怖とも思わず、マイペースで、本業に専念した。

その結果、事態は良い方向に向かった。

まず、彼の仕事は、この不景気にもかかわらず、ここ1年ほど収益が伸び続けている。金融機関との交渉や債務整理に一切のエネルギーを費やさず、そのかわり、そのエネルギーを「攻め」のほうに費やしたのだ。それが功を奏した。まだまともに借金返済できるほどには回復していないが、社員の給料を滞りなく支給できるレベルにまでは回復し、それに伴って内部のモチベーションも上がってきた。明らかに悪循環から好循環へ転換しつつある。(これが神経の細い社長さんだと、督促や競売と聞いただけで怯えてしまい、金融機関に振り回されて仕事が手につかなくなり、最後は自滅してしまうが、彼はそうしなかった。)

そしてなんと、それを見ていた金融機関(競売にかけた金融機関。つまり債権者)が、競売後に残った借金(無担保化した残債)を、強引に回収しようとせず、彼を間接的に応援するつもり(?)で、サービサーに二束三文で債権譲渡すると連絡してきた。通常だと債権譲渡は脅し文句として使われることが多いが、この銀行さんは、サービサーに債権譲渡されることの「意味」を丁寧に彼に教えてくれて、残債を10分の1以下に(1000万円の借金なら100万円以下に)サービサーとの話し合いで値切る方法もこっそり教えてくれた。

この調子であと1-2年、心身の健康を損ねない範囲で本業に専念すれば、残った借金は自己資金で全て精算し終えることが可能になり、また、一度マイホームを失ったとはいえ、またすぐに新しい家を買い直すことができる可能性もある。少なくとも現在の彼はそのつもりで明るく前向きに頑張っている。

本業そっちのけで金融機関との折衝にエネルギーを費やし、目先の勝ち負けにこだわるよりも、契約不履行した自分のほうが悪いのだからと潔く負けを認め、また契約どおりに返せない現実を受け止めて、それについてはジタバタせず、それはそれ、これはこれと区別して、自分が体質改善・原因根絶のために本当にやらなければならないこと、すなわち「本業の収益改善」をしたのが彼の勝因だった。(少し専門的な言い方をすれば、B/Sの改善よりもP/Lの改善を優先したのが勝因だった。)

少し裏ワザめいたやり方に映るかもしれないが、これは実は、そんなに難しいことではない。取立てや差押や競売といったものをまるでオバケや宇宙人みたいに正体不明の敵のように恐れず、マイペースを保つことができる人ならば、誰にでもできることだ。

もちろん、誰にでも向いている方法ではない。向き不向きはある。こういう問題の解決方法は、10人いれば10通り、いや、ひとり最低3通りx10人分=30通り以上もの選択肢がある。あくまで一例として参考程度にとどめてほしい。ここで私がいいたいのは、債権者との交渉や争いの勝ち負けにこだわるばかりが全てではない、時と場合によっては「負けるが勝ち」ということもあるのだということだ。

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Comments

勉強になりました 
今回のコメント、改めて勉強になりました。やはりいろいろな視点で見なくてはいけませんね。
 
 
負けるが勝ち。

これはかなり応用範囲が広いですよ。

民事裁判なんかでも、これがかなり当てはまりますし。

交渉ごとなんかでも、往々にして「負けるが勝ち」なことはありますよね。

 

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プロフィール

吉田猫次郎とNEKO-KEN相談員

Author:吉田猫次郎とNEKO-KEN相談員
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【NEKO-KEN】
中小・零細企業・自営業向け事業再生コンサルタント。東京都中野区。
経済産業省認定・経営革新等認定支援機関(認定支援機関)。
末期症状の会社の倒産回避(生き残りのための応急処置)から、原因究明、デューデリジェンス、再生スキーム策定、金融機関向け経営改善計画策定支援、資金繰り改善、PL改善(黒字化)、実行支援、事業承継、補助金、最後の出口へのお手伝いに至るまで、事業再生コンサルタントとしては一通りの経験と実績があります。
企業理念は「ヒト・モノ・カネの再生」。


【吉田猫次郎】
(株)NEKO-KEN代表取締役。
本名よしかわひろふみ。1968年東京生、乙女座、A型、申年、五黄土星。
著書13冊。講演300回以上。テレビ出演15回くらい。
20代のサラリーマン時代に高額の連帯保証人になり、その後、1998-2000年の脱サラ時に、借金苦・倒産危機で考えられる最悪の事態をほぼ全て体験したことがある(高利、多重、ヤミ金、怖い取立て、手形不渡り、ブラックリスト、強制執行など・・・だが自己破産はせず)。その体験記を、2001年に猫次郎と名乗ってホームページに公開したところ、思いがけずヒットしてしまい、2003年に書籍化。以後、事業再生コンサルタントに転身し現在に至る。
最近はスポーツらしいこともするようになり、2012年(44歳)から現在までにトライアスロンに10回出場、全て完走。フルマラソンも2回出場、2回完走。
嫌いな食べ物は、ダイコンと漬物。特に「たくあん」が大の苦手で、あれを食うのは、どの拷問よりも苦痛だと思う。

【相談員】
須田幸雄: CTP認定事業再生士。資金繰り改善、財務体質改善、労務、管理等に強い。

廣田守伸: CTP認定事業再生士。関西地区担当。事業再生コンサルタント歴16年以上の大ベテラン。

金久保 健: 中小企業診断士歴30年近く。マーケティング、事業性評価、PL改善に強いが、事業再生コンサルタントとしても10年近い実績がある。

 
★ 「相談」をご希望の方は、ホームページのほうに申込方法等を記載していますのでご覧下さい。有料と無料があります。 → 吉田猫次郎ホームページ

★ 取材、講演、執筆依頼は、直接メールまたはお電話下さい。 ooneko@nekojiro.net TEL(03)5342-9488

★ このブログは長い間、吉田猫次郎ひとりで書いておりましたが、2017年8月より、3名の相談員もたまに投稿しています。

 
 
 
 
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