
「このままでは資金が底を尽いて、倒産してしまう・・・」 と。
興味深いのが、憔悴しきっている新規相談者さんの多くが、「今まであまりお金に困ったことがない」という点です。
よく聴いてみると、資金ショートの経験もない。延滞の経験もない。返済猶予の経験もない。いやそれどころか、電気ガス水道の延滞経験もない。家賃を遅れたこともないという、優等生的な方が実に多いのです。
そしてそのような方に限って、支払いができなくなりそう(=まだ支払いができなくなったわけではない)な段階で、もうダメだ、死ぬしかないとか、自己破産しかないとか、そんなことを言っているのです。
ダメですよ。「平時と有事」で頭を切り替えないと。
あなたの感覚は至極真っ当だけど、もう少しユルく構えないと、この先、生き残っていけませんよ。
債権者に潰されるより前に、あなた自身が精神的に自滅してしまいますよ。
あまり知られていないことですが、倒産は、債権者に潰されるタイプの倒産よりも、
自滅型の倒産のほうがはるかに多いんです。
それを象徴しているのが、自己破産という言葉です。
自己破産とは、もうダメだと諦めて、自分の意思で弁護士さんに破産手続きを依頼し、裁判所で手続きすることをいいます。
自分側から破産を申し立てるから、自己破産というわけです。
その反対が、債権者破産(第三者破産)といわれる手続きです。自分は破産する気がなくても、債権者側が弁護士に依頼して裁判所に破産を申し立てる。
自己破産 ↔ 債権者破産。
我が国では、自己破産が99%以上を占めています。
債権者破産(第三者破産)は1%以下です。
ソースは裁判所の司法統計年報など、あちこちにあります。
自己破産に限ったことではありません。
まだまだ打つ手はあるのに、「もうダメだ」と思い込み、心が折れて、酒やクスリに頼ったり、自暴自棄になったり、そういう人は沢山います。もったいない。
心なんて、誰でも一度や二度は折れるものですよ。
折れたら、またつなげばいいじゃないですか。
私なんか、一生の間に何十回も心が折れてますよ。
何度もくじけそうに・・・いや、くじけましたよ。
いいじゃないですか、人間だもの。
大事なのは、そこで自滅して慌てて終了ボタンを押さないことです。
心が折れても、しばらく休んで起き上がることです。
心身や会社の信用が傷だらけになっても、平常心を保つことです。
これらは、べつに「鋼の精神力」が無くても、できます。
知識を身に付ければいいのです。
もっといえば、本やネットや相談で知識を増やすと共に、精神面でくじけないよう、情報交換できる仲間を増やしたりして、「知恵」も身に付けることです。
知識と知恵。
意識と知識の両輪を。
自滅型の倒産が多い。逆に言えば、
自滅さえしなければ、倒産の多くは防げると言えます。
私の経験上、それは確信に近いものがあります。
(売上が0まで落ち、借金が10億円以上残っても、しぶとく倒産回避して、数年後に蘇った方もいました)
まとめると、自滅しないためには、大らかな気持ち、知識、知恵、共有できる仲間、平常心などが必要です。
ところで、私は、「倒産を防ぐ勉強会」を2001年から定期開催してきました。「猫次郎塾メーリングリスト&掲示板」を2001年から10年くらい運営してきました。facebookの「猫塾秘密倶楽部」という会に2011年から参加してきました。
ここの常連さんたちは、実にたくましい人達ばかりです。倒産経験者や倒産寸前状態の経営者が多く、借金1億円以上、10億円以上、中には50億円以上の方もいます。代位弁済や競売、債権譲渡、差押などを受けた経験者も山ほどいます。社長なのに役員報酬は雀の涙、巨額の個人保証(連帯保証)を背負い、いつも支払に窮しています。お金がないことに慣れています。それでも明るく過ごしています。最初は真っ青な顔で相談に来られても、次第に明るくなっていき、今では本当に元気です。
そんな常連の皆さんに最近のコロナの感想を聞いてみると、
「いやー、ますます大変になってきましたよ」 と言いながらも、その声のトーンはどこどなく明るくて、そんなに悲観的になっていない様子です。いや、悲観的に構え、現実を受け入れながらも、その現実をユルく構え、目の前の脅威をのらりくらりとかわし、将来の方向転換のチャンスを窺っているような、そんな印象です。
貧乏耐性とでも言いましょうか、不況耐性とでも言いましょうか、
とにかく、乱世に強く、死にそうで死なない、雑草のような人達です。
ここにもまた、生き残るヒントがあると思いませんか?
猫