吉田猫次郎ブログ

事業再生、倒産回避、資金繰り改善、連帯保証人問題、借金自殺防止 ・・・などが専門ですが、ここはブログなので、もっと気楽にいろいろ書きます。

 

信用保証協会の保証の割合が 「5割」 になる!?


Category: 企業再生・事業再生関連   Tags: ---
「中小融資 保証見直し 企業の成長段階でメリハリ ベンチャーは手厚く 経産省」
2015/11/11付日本経済新聞 朝刊

 経済産業省は中小企業の融資が焦げ付いた場合に国などが肩代わりする信用保証制度を見直す。原則として債務の80%を保証しているが、創業から時間がたって経営が安定した企業の保証率を引き下げる。保証率を5~8割程度に区分する方向だ。(以下略)
引用元:
 http://www.nikkei.com/article/DGKKASFS10H6Z_Q5A111C1EE8000/


以下、猫次郎による解説です。

これはなかなかセンセーショナルなニュースかもしれません。

中小、とりわけ小規模企業向け融資の多くは、都道府県の信用保証協会の保証つきで占められています。
これは2007年までは融資額の100%を保証してくれていたので、金融機関としては、保証協会の保証がつきさえすればノーリスクで融資することができました。(その代わりといっては何ですが、2006年以前には、信用保証協会が第三者の連帯保証人を取るという信じられないことがまかり通っていました・・・) 
金融機関は、「保証協会の保証がつけば」、ほぼ無条件に中小零細に融資していました。 
金融機関の審査能力の欠如が問題視されることも、この頃から少なくありませんでした。

その後、2007年10月から「責任共有制度」が始まり、従来の全額保証から「8割保証」に切り替えられ、金融機関も2割相当のリスクを負うようになりました。(但しその後も全額保証の特別枠などが幅をきかせており、2013年頃までは保証協会つき融資の6割前後が「100%保証のまま」だったという話を同業者のセミナーで聞いたことがあります)

2014年2月には「経営者保証ガイドライン」が運用開始されました。
また、それより少し前から、金融機関は次第に第三者の連帯保証人を取ることがめっきり減り、
ゆっくりと、リスクを負うことに慣れていった感がありました。

そして今回のニュース…。

記事には、
「創業から時間がたって経営が安定した企業の保証率を引き下げる。」
「保証率を5~8割程度に区分する方向だ。」 
とあります。 
ということは、業歴の長い、成熟期~衰退期の会社は、保証協会つきで融資を受けても、5割しか保証してくれないということがありえるわけですね。 残りの5割は金融機関が自社リスクで融資する、いわばプロパーの状態になるわけです。
従来の8割~10割保証に慣れきっていた金融機関にとって、これはかなり大きな問題ではないでしょうか。

保証率を5割にするのか?それとも6割、7割、8割にするのか?その「基準」も、興味深いところです。
「創業から時間がたって」 「経営が安定した企業の保証率を引き下げる」 とありますので、
単に業歴の長さだけで決めるのではなく、財務基盤も精査されたうえで、保証率が決まるのでしょう。

ざっくり言えば、「安定期」の会社は、保証率が下がり、プロパーの比率が増えそうですが(それでも安心して融資できるでしょうが)、
「業歴は長いけど、財務基盤が不安定な会社 (要するに衰退期になりかけている会社」 は、保証率が7割か6割くらいになるのでしょうか?
もしそうだとすれば、残りの3割-4割を金融機関がリスクを負うことになり、だけど金融機関はそんな衰退期の会社にリスクを負って貸したくないから、陳腐な言い方ですが、「貸し渋り」などが始まるかもしれませんね。

もっとズバッと言ってしまうと、無駄に業歴だけが長くて、赤字スレスレ、実質債務超過、粉飾決算などをしている会社は、これまで以上に借りられなくなるんじゃないでしょうか。

もう少し掘り下げて考えてみましょう。

金融機関がリスクを負うようになると、金融機関も与信審査のシステムを大きく変える必要が出てきそうですね。
貸すのが仕事ですから(利息で利益を得ていますから)、貸さないわけにもいきません。
よって、貸すために、信用保証協会の保証だけで補いきれない何か、といっても連帯保証人を取るのは時代に逆行しているし、不動産担保を提供できる会社も限られているので、例えば、信用補完のために、「正確な財務諸表」 を求めるようになるかもしれませんね。
「会計監査のお墨付きの決算書が出せれば、5割保証でも喜んで融資します」 とか・・・。

今までの中小企業、とりわけ保証協会のお世話にならなければ借入できないような零細企業は、多くの場合、決算書の信ぴょう性に欠けていました。 意図的な粉飾(借りやすい決算書にお化粧)も残念ながらよく見かけるし、意図的でなくても結果的に実態とかけ離れた決算書 (例: 「資産の部」に1億円の資産が計上されているが、減価償却を怠ってきたり、回収不能な売掛金がそのまま資産計上されていたり、不良在庫を処分せずそのまま資産計上されていたり、仮払金や社長向け短期貸付金などの処理がイイカゲンだったりで、時価に換算すると3000万円にも満たないなど) も数多く見かけます。  こういう会社は、今まで以上に融資を受けにくくなるかもしれません。

「金融機関に厳密な査定を求める」 とも記事に書かれていました。 
その方法として最も考えられる(と私が思う)のは、慣れない「定性分析」(事業の将来性とか、社長さんの資質とか、知的資産とか) よりも、慣れた「定量分析」(財務分析など) を強化することではないでしょうか。 そのほうが、金融機関にとっては効率的かつ現実的な気がします。金融機関も忙しいですから。

もしかしたら、公認会計士さんや税理士さんが、大忙しになるかもしれませんね。
中小零細企業向けの会計監査業務などで。

もうひとつ、考えられることがあります。
それは、「民間の保証会社をもっと活用する」 ことです。
現実問題として、零細企業は、財務諸表の精度UPなどにいちいちコストと時間をかけていられないという側面があります。
貧乏暇なしなのです。
ただでさえ消費税の負担が増して、税理士さんに払う顧問料だけでも四苦八苦しているのです。
だとすれば、「決算書の精度UP」などしたくてもできないから、もうひとつの信用補完の方法として、「民間の保証会社」を活用するというニーズが増えるかもしれません。 

但し、民間の保証会社もしっかり保証料を取るので、どちらに転んでも、資金調達コストは上がりそうですね・・・。

以上のような理由から、業歴の長い、だけど財務基盤が弱い中小零細企業は、資金調達が少し難しくなりそうです。
今までドンブリ勘定でギリギリの資金繰りをしてきた高齢の社長さんや、2代目3代目の社長さんは、早めに対策を講じておく必要がありそうですね。


一方、記事には 「ベンチャーなど成長企業の保証率を比較的手厚くして資金を借りやすくする」 とありますので、成長期、黒字基調、キチンとした決算を行なっている会社などは、これまで以上に資金調達しやすくなるかもしれません。これは大いに期待したいところですね。 
(衰退期の会社がパッパと廃業して、事業承継時に息子さんに新会社を作らせて事業譲渡というような生き残り方も、これからますます増えるかも・・・?)


それと、「金融検査マニュアル」 も大幅に改正されるかもしれませんね。
ジッパ(実質破綻先)、ハケ(破綻懸念先)、ヨウカン(要管理先)などが死語になる日も近いかも・・・?


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Comments

信用保証制度見直し 
日本金融新聞にも先週記事が載っていました。

 中小企業庁は、信用保証制度を見直すための検討組織を11月中にも
立ち上げ12月末までに結論をまとめる方針であると。






 

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プロフィール

吉田猫次郎

Author:吉田猫次郎
中小・零細企業・自営業向け事業再生コンサルタント。認定事業再生士(CTP)。経営革新等認定支援機関(株)NEKO-KEN代表取締役。
本名はホームページや書籍に記載。
著書多数。講演・メディア出演多数。
1968年東京生、乙女座、A型、申年、五黄土星。

20代の商社マン時代に高額の連帯保証人になり、その後、1998-2000年の脱サラ時に、借金苦・倒産危機で考えられる最悪の事態をほぼ全て体験したことがある(高利の連帯保証人、ヤミ金の怖い取立て、手形不渡り、ブラックリスト、強制執行など・・・だが自己破産はしなかった)。

趣味は釣り、アウトドア全般、ほか。

最近はスポーツらしいこともするようになり、2012年(44歳)でトライアスロンのオリンピックディスタンスに初挑戦&完走。2014年(45歳)でフルマラソン初挑戦&完走。2015年(46歳)にはトライアスロンのアイアンマン70.3に初挑戦&完走。2016年も完走。徐々にメタボ解消。だがすぐにリバウンド。

嫌いな食べ物は、ダイコンと漬物。特に「たくあん」が大の苦手で、あれを食うのは、どの拷問よりも苦痛だと思う。

 
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