吉田猫次郎とNEKO-KEN相談員のブログ

中小企業再生や敗者復活に関する投稿が主ですが、ホームページとブログを区別し、ここでは幾分ユルめの内容になっています。

 

「北海道出張」と「倒産寸前某社」と「釣り」の話


Category: 企業再生・事業再生関連   Tags: ---
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私は2014年10月から北海道のある倒産寸前会社と月額ウン万円で顧問契約し、以後、月に1回の頻度で北海道出張して同社を訪問しています。いつも1泊2日の日程です。

私が相談者や顧問先から呼ばれて現地へ出張する場合、交通費宿泊費を相手方に出してもらっていますが、なにぶんお金のない会社ばかり見ているので、「飛行機は特割など最安のエコノミー」「新幹線も金券ショップや往復割などでなるべく安く買って普通席」「マイカーで行けるところはマイカーで」「宿泊は安宿で十分」「余計な接待などは無用(特に水商売系の店はお断り)」 にこだわっています。 優良企業向けのコンサルタントと大違いですね。

先の北海道出張も、全日空で定価45000円(往復9万円)ほどの便を、特割や楽天トラベルや株主優待券などを駆使して、毎回、往復3-4万円の交通費で済ませています。宿泊も1泊4000円台です。

さて、この北海道の倒産寸前某社ですが、次のような問題を抱えていました。(地域や業種は伏せます)

1.地域密着にならざるをえない業種なのに、人口は減っている
2.メインの商品の売上が、年々落ちている(年商8千万くらい)
3.銀行には返済猶予中(のちに延滞、代位弁済になった)
4.債務超過(実態ベースで資産2千万:負債9千万といったところ)
5.赤字体質(競争が激しいため安売りをしていたこと、円安による原価高騰、外注費割高などが主因)
6.計数管理がずさん(会計ソフトなし、経理担当不在、恐ろしいほどのドンブリ勘定)
7.未払金・未払費用も多数あり
8.手元資金は常に枯渇気味(資金ショートなどという次元を超えている)
9.カードローン等の借入もあり、延滞中

しかし、強みや活路もあると感じました。

◎ 営業や集客のセンスが抜群にある。(事実、業界としては地域一番の売上を誇る)
◎ 社長は今は溺れそうな状態だが、元は運動部系で打たれ強いタイプ。
◎ 少人数ながら、非常に優秀な部下が1人いる。
◎ メイン商品は需要減少傾向だが、少し広く見渡せば、「その市場」にはまだまだ可能性がある。
◎ 固定資産がない。第三者連帯保証人もいない。つまり、身軽で身動きとりやすい。
◎ メイン商品は仕入資金がどうしても必要だが、サブの商品は、仕入れがいらない。粗利もまあまあ。
◎ その他、秘密の強みがいくつかある。

よって、生き残り策は、シンプルにいえば、上記1~9の問題点をできるかぎり解消することと、上記◎の強み・活路をできるかぎり伸ばすということになるでしょう。

私は2014年10月の最初の訪問時に決算書を8期分預かって、決算書の分析レポートを簡易的にわかりやすく書いて差し上げました。 が、なにぶんドンブリ勘定で、決算書の数字の信憑性も「?」な部分が多く見られましたし、社長さんも数字に非常に弱い方でしたので、エクセルを使わず、ワードで、文章中心に、必要最低限のことだけを解説していきました。(その前に、応急処置でやることが沢山ありましたし、後述するように「もっと大事な問題」も内包していましたから・・・)

2014年11月、12月、1月、2月、3月の訪問時も、だいたい同じような話をしました。
やはり同じように、専門的な話や数字的な話は最小限にとどめて、その前に、目の前の応急処置的な生き残り策(クライシス・マネジメント的な話)を具体的に解説したり、長期的な収益改善策 (例: 需要減で仕入資金の必要なメイン商品はそこそこにして、それよりも仕入が要らず潜在需要も高いと思われるサブ商品や、それに付随した新規事業の計画を立てましょうよ、などなど)をしながら、あとは余談や雑談のほうが多かったというのが実際でした。

ここで「雑談」の話をしましょう。

実は、この社長さんは、別の大きな問題を内包していました。
それは、

1. ほぼ年中無休で働いている。休暇を全くといっていいほど取っていない。
2. 倒産寸前状態で相当なストレスを抱えている。
3. かれこれ6-7年以上も前から、資金繰りが苦しかった様子。ストレスもずっと。
4. 運動不足。メタボ。(体重100㎏近く) 昔はスポーツマンだったのに、今は心臓が悪い。
5. 資金繰りで思い詰めて、自殺を考えたこともあった模様。
6. 北海道のはずれに位置しているので、身近に相談できる相手が少ない。


せっかく潜在能力は高いのに(学生時代は運動部部長、英語も実用レベル以上、集客力は天才的)、それが全く活かされていない・・・。

私はよく講演会や書籍などで、「意識と知識の両輪」 という話をします。

たいていの経営上の問題は「知識」で解決できるが(財務の知識、金融の知識、法律の知識、救済制度の知識、労務の知識、リストラの知識、販促の知識、など)、その「知識」に辿り着けるかどうかは、社長さんの「意識」で決まる、というような話です。 また、いくら完璧な事業再生スキームを描いても、実行にあたっては、日々の厳しい現実(資金不足との闘いなど)に直面しなければなりません。そこでも「意識」というのが大変重要になってきます。 

「意識と知識の両輪」が回れば無敵なのですが、私はその前に、なによりも「意識」のちょっとした改革を促すのが、事業再生の最重要ポイントだと考えています。

とまあ、そんな話を何年もとくとくとし続けています。

北海道のこの社長さんにも、まさにそれが当てはまると感じました。


ズバッと言ってしまえば、この会社を再生・安定化させるためには、冒頭のほうで書いた会社としての強み・弱みよりも、
社長さん個人の「意識と知識の両輪」のほうが最重要課題であると私は考えました。

【知識面】

1.社長の計数管理能力が簿記3級並みにアップすれば、たぶん会社の数字が可視化しやすくなり、モレもなくなるだろう。

2.社長が決算書の入門書を簡単なものから10冊x3回ずつぐらい読み込めば、おそらく、利益とキャッシュフローの概念(売れているのにどうしてカネが残らないのか?)や、運転資本の概念(自社に必要な運転資金はいくらか?)や、バランスシートの概念(例えばトラックを買うのは現金とローンどちらがいいか?購入とリースどちらがいいか?など)がわかり、より精緻な計画を立てることができる。 (例:今期は売上は3%アップで十分。売上原価は仕入高が割高なのでメイン商品の比率を20%下げ、仕入のいらないサブ商品の割合を20%上げ、かつ、外注費を10%減らせば、粗利は前年比20%UPさせることができ、販管費を10%削減するだけで営業利益は5%改善できる。そうすれば借入金返済額も年間200万円増やせるだろう、とか・・・) こうなればしめたもの。会社経営が「忍耐」というより「知的なゲーム」のように楽しくなってくるはず。 また、船の船長と同じで、海図の読めない船長では乗組員は不安でしょうがないけど、海図の読める船長なら心強い。 上場企業の社長の中には、オタク的といってもいいくらい財務諸表の分析に詳しい人が多い。その域まで達してくれたら、もともと集客力はあるだけに、化ける可能性があると思う。

3.金融の知識、法律の知識、経営の知識などは、ここ数ヶ月でだいぶ身についてきた。

4.業界の知識は、元からかなりある。


【意識面】 

1.「心身の健康」を取り戻すこと。

2.心の健康は、休暇を取ること、趣味をもつこと、陽に当たること、自然と触れること、体を動かすこと、何かに夢中になれることがカギを握っていると思う。

3.カラダの健康は、心臓が悪くなったのはどうやら近年のことのようなので、メタボ解消、ほどよい運動、暴飲暴食をやめること、ストレスを溜めすぎないことなどが重要と思われる。

4.倒産危機による不安は、私がどんなことでも個々にお教えできるから心配無用。
大丈夫。私がついていれば絶対に倒産はしない。

5.倒産の心配などしなくていいから(たとえ末期症状でも大丈夫)、それよりも、もっと先のビジョンを考えられるくらいの、心の余裕、向上心などを持ってほしい。そのためには、無理してでも休暇を取り、趣味のひとつくらい持って、心の余裕をつくること。また。私も含めて「同じ境遇をくぐり抜けてきた人」と友達になり、情報交換したり、遊んだり、切磋琢磨したりできるようにしたい。

6.そして、将来のビジョンなどを考えられるくらいに余裕ができてきたら、いよいよ「弱点の補強」にとりかかってほしい。



・・・などなど、こんなことを考えながら、あるときは雑談し、またあるときは雑談の中で数字の話などをチラつかせたりしました。

暖かくなってからは、会社から車で10分~30分の川へ、社長さんに運転してもらって、出張日の早朝や夕方に釣りに行くようになりました。(私は釣歴40年の公認釣りインストラクターなので、全国どこへ行っても釣れるし、教えることも得意なのです)

hokkaido201506
こんなニジマスがいくらでも釣れます。さすが北海道。
こんな恵まれた環境なのに、今まで気付かなかったそうです。

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エサでは釣れ過ぎるので、翌月からはルアーやフライで釣るようになりました。

こうして、この会社の社長さんは、今年のGW頃からすっかり釣りにハマり、朝の出勤前に、ほぼ毎日、1時間ほどマス釣りをするようになりました。

マスのルアー&フライフッシングは、よく歩きます。1時間で2キロ以上歩くこともザラです。非常に健康的な趣味です。

すると、どうでしょう。

何やら、社長さんも会社も、仕事の現場が活発になってきました。

最近では多方面に意欲的になり、自発的に 「タバコやめようかな」「体重落とそうかな」「運動しようかな」「やっぱり数字に強くならないといけないな」 と、行動を起こし始めました。

ここまでくれば、もう大丈夫。

あとは私がついていても(いなくても)、自発的に走り出すことでしょう。
倒産回避はもちろん大丈夫。
「意識」が上がるにつれて、「知識」もスポンジのように吸収していき、
ビジネスモデルの変革も比較的容易にできるようになるでしょう。
「延命」にとどまらず、「(抜本的)再生」が実現できるのも、そう遠くないと思います。


来月の北海道出張も楽しみです。


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Comments

いつも拝見させていただいてます。 
いつもブログを拝見させていただいてます。
参考になる情報が多く最新記事を拝見するのがいつも楽しみです。

そこで少しご教示いただきたいのですが、

>社長が決算書の入門書を簡単なものから10冊x3回ずつぐらい読み込めば
>利益とキャッシュフローの概念(売れているのにどうしてカネが残らないのか?)や、
>運転資本の概念(自社に必要な運転資金はいくらか?)や、
>バランスシートの概念(例えばトラックを買うのは現金とローンどちらがいいか?購入とリースどちらがいいか?など)がわかり

とのことですが、具体的におすすめの書籍などは御座いますでしょうか?
お手すきの時で構いませんので、何卒ご教示ください。

よろしくお願いいたします。
 

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プロフィール

吉田猫次郎とNEKO-KEN相談員

Author:吉田猫次郎とNEKO-KEN相談員
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【NEKO-KEN】
中小・零細企業・自営業向け事業再生コンサルタント。東京都中野区。
経営革新等認定支援機関(認定支援機関)。
末期症状の会社の倒産回避(生き残りのための応急処置)から、原因究明、デューデリジェンス、再生スキーム策定、金融機関向け経営改善計画策定支援、資金繰り改善、PL改善(黒字化)、実行支援、最後の出口へのお手伝いに至るまで、事業再生コンサルタントとしては一通りの経験と実績があります。
ミッションは「ヒト・モノ・カネの再生」。


【吉田猫次郎】
(株)NEKO-KEN代表取締役。
本名よしかわひろふみ。1968年東京生、乙女座、A型、申年、五黄土星。
著書12冊。講演300回以上。テレビ出演15回くらい。
20代のサラリーマン時代に高額の連帯保証人になり、その後、1998-2000年の脱サラ時に、借金苦・倒産危機で考えられる最悪の事態をほぼ全て体験したことがある(高利、多重、ヤミ金、怖い取立て、手形不渡り、ブラックリスト、強制執行など・・・だが自己破産はせず)。その体験記を、2001年に猫次郎と名乗ってホームページに公開したところ、思いがけずヒットしてしまい、2003年に書籍化。以後、事業再生コンサルタントに転身し現在に至る。
最近はスポーツらしいこともするようになり、2012年(44歳)から現在までにトライアスロンに8回出場、全て完走。フルマラソンも2回出場、2回完走。
嫌いな食べ物は、ダイコンと漬物。特に「たくあん」が大の苦手で、あれを食うのは、どの拷問よりも苦痛だと思う。

【相談員】
須田幸雄: CTP認定事業再生士。資金繰り改善、財務体質改善、労務、管理等に強い。

廣田守伸: CTP認定事業再生士。関西地区担当。事業再生コンサルタント歴16年以上の大ベテラン。

金久保 健: 中小企業診断士歴20数年。マーケティング、事業性評価、PL改善に強いが、事業再生コンサルタントとしても10年近い実績がある。

 
★ 「相談」をご希望の方は、ホームページのほうに申込方法等を記載していますのでご覧下さい。有料と無料があります。 → 吉田猫次郎ホームページ

★ 取材、講演、執筆依頼は、直接メールまたは電話またはFAX下さい。 ooneko@nekojiro.net TEL(03)5342-9488 FAX (03)3229-8329

★ このブログは長い間、吉田猫次郎ひとりで書いておりましたが、2017年8月より、3名の相談員と共同作業で投稿していきます。お楽しみに。

 
 
 
 
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吉田猫次郎 著
震災後に倒産しない法
 
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「連帯保証人」ハンコ押したらすごかった。でもあきらめるのはまだ早い!
 
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借金なんかで死ぬな!
 
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