吉田猫次郎ブログ

事業再生、倒産回避、資金繰り改善、連帯保証人問題、借金自殺防止 ・・・などが専門ですが、ここはブログなので、もっと気楽にいろいろ書きます。

 

「資金繰りよりも、本業に専念すること!」 の重要性と、ある印象深い事例


Category: 企業再生・事業再生関連   Tags: ---
私はもう10年以上も前から、書籍やweb上などで、「資金繰りは二の次!本業に専念すること!」 と説いてきました。

一番悪いのは、「目先の資金繰りにとらわれて、本業が手につかない。精神的にもいっぱいいっぱいで、夜も寝付けない」 というものです。
こうなると、せっかく良い専門家に最高の事業再生計画を描いてもらっても、実行する気力が湧いてきません。
最後は債権者に潰される前に、自ら「自滅」してしまいます。
(この「自滅」型の倒産が、実は一番多いのです)

そうならないようにするためには、簡単です、逆のことをすればいいのです。

◎ 資金繰りにとらわれていたら・・・、資金繰りなど半ばうっちゃっておくぐらいの気構えに切り替えること。
◎ 本業が手につかない状態ならば・・・、心を鬼にして、本業第一で臨むこと。
◎ 夜も眠れないようなら・・・、無理してでも、よく眠れる環境を作ること。

そんなことを、10年以上ずっと説き続けてきました。

よく、「運転資金は血液」、「資金繰りが止まったら、血液の循環が止まったのと等しく、会社は潰れる」 と言われています。
経営本で、その手の記述をよく見かけます。

しかし、私はそうは思いません。
(但し中小企業、零細企業、自営業に限る。大企業は意外とモロい)

資金繰りは確かに重要ですが、中小零細自営業の場合、たとえ血の流れが止まっても、相応のダメージ(督促、ある程度の信用低下、差押など)を受ける「だけ」で、「潰れる」かどうかは、社長さんの気持ち次第でどうにでもなると思います。

延滞・督促 = 倒産ではありません。
信用低下 = 倒産ではありません。
差押 = 倒産ではありません。
どれをとっても、挽回の余地はあります。


ひとつ、印象深い事例を紹介します。


地方の、ある製造業です。
(地域や具体的な業種は伏せます)

私は2011年から、この会社の相談を受け続けてきました。
業歴は非常に長く、地元では老舗企業として名高い会社ですが、内情はまさに倒産寸前状態で、

・ 資産の3倍以上の負債(重度の債務超過)
・ 年商1億円ちょっとに対して3億円以上の借入金(借入過多)
・ 先代から長きにわたって営業赤字、経常赤字、減収減益
・ 慢性資金不足
・ 銀行には5年以上リスケジュールの延長・再延長・再々延長をお願いしてウンザリされている状態、でした。

他の専門家からは、自己破産を勧められたそうです。

しかし、自己破産は選択しませんでした。

2011年は、リスケを再延長しました。(元金棚上げ、利息のみ支払い)
資金繰りは末期症状に近く、手元資金は月商の0.1ヵ月分未満、社長は役員報酬もろくに取れない状態で年中無休で働いていました。
本業のほうは、優秀な製造責任者が良いモノづくりにこだわり続け、優秀な営業マンと社長が飛び込みで東京や海外へ飛び込み営業に回り、数字的な成果はあまり出ませんでしたが(赤字)、タネ蒔きとしては感触良好だったようです。

2012年には、売上が少し伸びてきました。(!)
が、それに比例して原材料費の確保がどうしても必要になり、利息さえもSTOPしてしまいました。
最長で、10ヶ月以上も利息を止め(延滞)、本当ならとっくに代位弁済や債権譲渡や担保競売になっていてもおかしくない状態でしたが、銀行に誠心誠意こめて、
「元金はおろか利息も長期にわたって止めてしまい本当に申し訳ありません。しかしながら、今、社運をかけて本気で良いモノ作りに尽力しており、それが外部に評価されて、ある賞を受賞しました。売上も伸びてきています。近い将来、必ず本業の収益で返済するつもりですので、今はどうか、なけなしの手元資金を、原材料の仕入に使わせて下さい。返済はもうあと何ヶ月かSTOPさせて下さい」
と懇願しました。
(リスケ交渉の一般常識からは大きくかけ離れたメチャクチャなお願いなのは百も承知で、最悪の場合、銀行がこれ以上待ってくれず、代位弁済や債権譲渡や競売になることも覚悟の上でした。)

2013年前半も、元利ともに返済STOPしていました。

2013年後半には、売上がなかなか伸びてきました。
そして、延滞利息の幾ばくかを支払えるようになってきました。メインバンクも、少し好意的になってきました。
「もう少し待ちましょう」 と。
リスケはもちろん延長、延長、再延長です。
この期の決算で、実に10数年ぶりに「営業利益」が黒字になりました。
償却前経常利益も黒字になりました。
重度の債務超過はそのまま。
手元資金は、原材料仕入代金と販管費と税金と生活ギリギリの役員報酬くらいは自己資金で捻出できるくらいになりました。
借入による資金調達はもうかれこれ7年以上できていないので、全て支払ったらスッカラカンという、タイトな資金繰りです。

2014年には、もう少し余裕がでてきました。
銀行には利息プラス元金10万円だけ返せるようになり、リスケには違いありませんが、従来と比べればかなりの改善です。
売上も利益も、さらに伸びてきました。
設備も人員も仕入資金も限られているので「V字回復」はできませんが、「作れば作るだけ売れる」という状態になってきました。
これもひとえに、優秀な製造責任者と優秀な営業マンにのびのびやらせて、社長さん自身も一緒に営業やモノ作りに励んだ(資金繰りはその次という優先順位にした)結果にほかなりません。
決算はもちろん黒字。前年比増収増益。
債務超過解消にはまだこのペースでは30年以上かかりそうですが、なんとなく出口が見えてきました。
銀行さんも、だいぶ好意的になってくれました。

2015年上半期。
「作れば作るだけ売れる」「だけど材料の仕入資金がないので、緩やかな増収増益に甘んじている」 という状態は相変わらず。
さらには、市場における話題性がグングン盛り上がってきました。
「仮に、もし、原材料の仕入資金としてあと1000万円くらい調達できれば、1億円台の売上をたちまち2億円台に伸ばせるだろう・・・」 というのが、当事者はもとより、外部の専門家や金融機関から見ても現実味のある話に見えてきました。

そして、2015年6月。
つい数日前のこと。
債務超過、7年以上リスケ中にもかかわらず、なんと、メインバンクが、
「原材料の仕入資金にいくら必要ですか?他に設備投資や手形割引はご入用ではありませんか?」
「特例中の特例として、ご融資を検討しています」
と、わざわざ支店長が本店の方を連れて、会社まで来て下さったのです!!

今まで延滞しても待ってくれて、あまつさえ、債務超過でリスケ中にもかかわらず融資の提案をしてくれたメインバンクの懐の深さには頭が下がるばかりですが、それ以上にすごいのは、ブレずに本業に専心してきた社長さんと従業員さん達です。

私のこれまでの役目は、手取り足取りコンサルティングすることではありませんでした。
月額ウン万円で顧問契約していましたが、少し距離の離れたところから、要所要所で「ツボ」をアドバイスしているに過ぎませんでした。
主役は最初から最後まで、この社長さんでした。

おそらく、この会社は、これから上昇気流に乗って、法的整理や私的整理による債権カットなどせず、「自社の稼ぎ」だけで借金を完済できるようになると思います。 銀行が望む「実抜計画」「合実計画」に合致した経営再建計画を描き、実行に移せるようになると思います。 それもこれも、「資金繰りよりも本業に専念すること!」 を実践したからにほかなりません。


スポンサーサイト


Comments

 
素晴らしい会社ですね。
 

Leave a Comment



04 2017
SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -

03

05


 
プロフィール

吉田猫次郎

Author:吉田猫次郎
中小・零細企業・自営業向け事業再生コンサルタント。認定事業再生士(CTP)。経営革新等認定支援機関(株)NEKO-KEN代表取締役。
本名はホームページや書籍に記載。
著書多数。講演・メディア出演多数。
1968年東京生、乙女座、A型、申年、五黄土星。

20代の商社マン時代に高額の連帯保証人になり、その後、1998-2000年の脱サラ時に、借金苦・倒産危機で考えられる最悪の事態をほぼ全て体験したことがある(高利の連帯保証人、ヤミ金の怖い取立て、手形不渡り、ブラックリスト、強制執行など・・・だが自己破産はしなかった)。

趣味は釣り、アウトドア全般、ほか。

最近はスポーツらしいこともするようになり、2012年(44歳)でトライアスロンのオリンピックディスタンスに初挑戦&完走。2014年(45歳)でフルマラソン初挑戦&完走。2015年(46歳)にはトライアスロンのアイアンマン70.3に初挑戦&完走。2016年も完走。徐々にメタボ解消。だがすぐにリバウンド。

嫌いな食べ物は、ダイコンと漬物。特に「たくあん」が大の苦手で、あれを食うのは、どの拷問よりも苦痛だと思う。

 
★ 「相談」をご希望の方は、当ブログではなく、ホームページのほうに申込方法等を記載していますのでご覧下さい。有料と無料があります。 → 吉田猫次郎ホームページ

★ 取材、講演、執筆依頼は、直接メールまたは電話またはFAX下さい。 ooneko@nekojiro.net TEL(03)5342-9488 FAX (03)3229-8329

 
 
 
猫研バナー
リンクフリーです。
猫研
 
相互リンク集
かんたん相互リンク
 
ツイッター
 
ブログ内検索
 
 
 
吉田猫次郎 著
震災後に倒産しない法
 
吉田猫次郎 著
「連帯保証人」ハンコ押したらすごかった。でもあきらめるのはまだ早い!
 
吉田猫次郎 著
借金なんかで死ぬな!
 
吉田猫次郎 著
働けません。
 


Archive   RSS   Login