
もうひとつ、昔から全く変わっていない傾向があります。
それは、借金苦で自ら命を絶った方のほとんどが、負債総額で100万~1億円未満だということです。
10年前も今も、これは変わりません。
まれに2億、3億の遺族の方も相談に来られますが、5億円以上になると皆無です。
一番多い層は、だいたい負債総額3000万円~1億未満のあたりです。
これは何を意味するのか?
私は遺族からの相談のほかにも、自殺未遂して奇跡的に生き残った中小零細企業の経営者さんから相談を受けたり、遺書まで書いたものの実行まで踏み切れなかった未遂未満の社長さんからの相談を受けることもしばしばあります。そして、彼らもまた、負債総額は「1億円未満」がほとんどなのです。2-3億級はごくわずか。5億以上は皆無です。
未遂や未遂未満の社長さんにお聞きしてみると、やはり想像どおり、「保険」 というのが出てきます。
つまり、
「自分が死ねば、保険金で借金返済できると思った」 (本当は死にたくない)
という気持ちです。
私も同様の経験がありますので、これについては痛いほどわかります。
生命保険に加入していれば、死ねばウン千万円くらいの保険金が出ることが多いでしょう。
(但し契約3年未満は出ないのが普通)
さらに、住宅ローンにいたっては、「団信(団体信用生命保険)」がありますので、団信で住宅ローンの残債を完済することができます。
これが変な気持ちを起こさせるのです。
ところが一方、借金の総額が5億円、10億円、100億円といったケタ違いな高額になると、生命保険ではまず返しきれません。金額が大きすぎるので、「自ら命を絶って、保険金で借金を返そう」 などと考えても無駄です。
このような高額債務者になると、実にあっけらかんとしています。
「家なんか手放してもいい。また儲けて買えばいい」
「いちど失敗しても、二度目があるさ」
「返したくても返せないんじゃ。これ以上、自分にはどうにもできん。(債権者さん、差押でも何でも好きなようにやってくれ。わしが悪いんじゃから、腹は括っておる)」
と。
私のところには、年に1人くらい、負債総額100億円を超える大物(?)が相談に来られます。
彼らは、必ずと言っていいほど、元気です。
少なくとも、生きるとか死ぬとか、そういう次元で相談に来られる方はいません。
いっぽう、これまた年に1人くらい、500万円にも満たない借金で、「自分には500万円も借金があります。もう死ぬしかないのでしょうか・・・?」 と思い詰めた相談をされる方がいます。表情は暗く、声のトーンにも覇気が感じられません。この世の終りのような悲壮感を抱えて相談に来られます。
考えさせられますね。
私はときどき、100億円の借金よりも、500万円の借金のほうが重いんじゃないかと思うことがあります。
猫