
但し、相談を受ける私の側には、いろいろ制約があります。
・私一人でやっているので、あまり沢山受けられない。
・これは「仕事」ではないので、仕事外の、空いた時間にしか応対できない。
・私は医者でもカウンセラーでもないので、メンタルケアは専門外。「お金のアドバイス」しかできない。
・助成金などをもらっているわけでもないので、完全手弁当。
ホームページで大々的に書くと相談が増えてしまい、こなしきれなくなるので、最近はあまり告知しなくなり、ひっそりと、この活動をしていました。
ただ、ひっそりといっても、その件数は決して少なくはなく、
毎年毎年、年間15人~25人くらいは、自死遺族の相談を受けてきました。
どんな相談が多いかというと、
・「お父さんが亡くなった」という方がほとんど。次に「夫が」「お兄さんが」など。男性家族を失った人が9割以上。
・相談者は、その奥さん、お子さんなど。
・原因を聞いてみると、「個人の多重債務」で亡くなった方は、10年前は非常に多かったが、最近はほとんどいない。
・最近は多重債務ではなく、中小零細企業の「倒産」や「倒産危機」が一番多い。
・債権者別にいうと、ヤミ金やサラ金に追い込まれたようなケースは今では少数で、ほとんどは、銀行、信金、保証協会、社保、買掛先、従業員給料などの支払いに苦労して、思い詰めてしまったケースが多い。
・生前、お父さんやお兄さんは、誰にも相談しなかった模様。情報収集も苦手だった模様。
・遺族の方が直面している問題としては、「借金の相続」(特に保証協会からの請求対処法)、「相続放棄すべきか否か」、「連帯保証人問題」、「子供の学費をどう捻出するか」、「会社を引き継ぐべきか否か」、「担保に取られている自宅はどうなるのか」といったものが多い。
もちろん、この全てに、私の知る限りの全てをお答えしています。
必要に応じて、専門家を紹介したりもしています。
私は、本来は、「自殺防止」の側の人間です。
借金や倒産危機なんて、切り抜け方はいくらでもある。死ぬ必要なんてない。
そのことを、今までくどいくらいに説いてきました。
結果も沢山出してきました。
「借金苦で自殺まで思い詰めていました。遺書まで書きました。でも、ネットで猫次郎さんのサイトを見つけて、夢中になって隅々まで読んでいくうちに、死ぬ気が失せました! これからも生きてがんばります!」 というようなお便りは、今まで数え切れないほどもらってきました。
私自身も、倒産危機や借金苦で自殺まで思い詰めた経験がありますから、その気持ちはよく理解できるつもりです。「借金自殺防止」のためのアドバイスなら、気持ちの面でも、テクニカルな面でも、自信があります。
いっぽう、私は遺族ではありませんから、「遺族の方のケア」は、あまり得意ではありません。
得意ではないので、あまり積極的にこれを打ち出すのは気が引けます。
お金を取る気にも、もちろん、なれません。
遺族の方のために「ひっそりと、無料相談を受けている」のは、そんな背景があります。
どこまでお役に立てるかわからないのです。
でも、何か駆り立てるものがあり、かれこれ10年以上、微力ながら、遺族向けの無料相談などという活動をさせて頂いている次第です。
最近の遺族相談の事例で、強烈に印象に残っているものを2つあげましょう。
どちらも現在進行形です。
私は、心の底から、彼らを応援したいと思います。
(1)某年某月、「両親が借金苦で自殺しました。」と手紙をくれた、10代の女性。大学に合格していたものの、お金が心配だし、気持ち的にもそれどころではなかったので、入学辞退しようとしていた。兄弟も頼れる親戚もいない。これから独りで生き抜くしかない。
しかし、よく聴いたら、やはり進学したい気持ちも強いようだった。 そこで、入学金の納付期限(3月中旬)を少し延ばしてもらうべく、一緒に大学まで付き添った。大学側はこれを快諾してくれた。いわば、入学金のリスケジュール交渉の同行のようなもの。 彼女はその後、学費免除と奨学金を併用でき、住まいも寮生活とアルバイトで何とかなり、あと数年で就職活動というところまでいっている。ご両親の借金の問題も全て解決した。
(2)つい最近相談を受けた30歳前後の男性。10年以上前に父が自殺し、そのときに進学を断念した。(高校時代は相当成績が良かった模様)
今は東京へ出てきて、アルバイトして一人暮らしをしているが、最近、「やっぱり大学で勉強したい」という気持ちがメラメラ湧いてきて、独学で勉強を始めた。研究職に就きたいので、国立の理系を受験したい。
猫