吉田猫次郎とNEKO-KEN相談員のブログ

中小企業再生や敗者復活に関する投稿が主ですが、ホームページとブログを区別し、ここでは幾分ユルめの内容になっています。

 

たかが債務超過、されど債務超過


Category: 企業再生・事業再生関連   Tags: ---
「債務超過」(さいむ・ちょうか)という言葉があります。

会社経営において非常に重要な意味をもつ単語ですので、よく知っておく必要があります。
(業歴ウン十年の社長さんでも債務超過の意味を知らない人が結構多い・・・)

債務超過は、「借金が多い」という意味ではありません。
わかりやすく言えば、債務超過とは、「資産よりも負債のほうが多い状態」を意味します。

たとえば、借金が100円しかなくても、
資産が全部で99円以下しかなければ、
まぎれもなく債務超過です。
99円の全資産を切り崩しても、100円の借金を返しきれない状態ですね。

いっぽう、借金が300億円以上あっても、
資産が全部で301億円以上あれば、債務超過ではありません。
ある意味、優良企業と言えるでしょう。

(但し本当の優良企業を目指すなら、借金300億円あれば、資産は400億円以上、つまり自己資本比率25%以上は欲しいところですが・・・)

少し教科書通りの言い方をすれば、
債務超過とは、「貸借対照表上の負債の部の合計が、資産の部の合計を上回った状態、すなわち、純資産がマイナスの状態」 ということになります。


ところで、ひとくちに債務超過といっても、
大企業(上場企業)と中小企業とでは、かなり意味合いが違ってきます。


上場企業が債務超過に陥ると、
上場廃止になる可能性が一気に高まります。
(例: http://www.fukeiki.com/2013/06/nakayama-steel-caution.html  )
 東京証券取引所の発表によると、この会社は、今年3月の決算で273億の債務超過に陥ったため、1年以内に債務超過が解消できなければ上場廃止になります。猶予期間はたった1年です。(但し地域経済活性化支援機構の支援下で債務超過の解消を目指している場合は猶予期間は2年に延長されるそうですが)
まあ、上場廃止になってもそれで倒産してしまうわけではありませんが、資金調達の道が大きく狭まってしまうことは間違いないでしょう。
債務超過&上場廃止により信用が低下し、取引先からも与信限度枠を下げられたり、決済条件を短くさせられるかもしれません。銀行から融資の際の金利を引き上げられるかもしれません。
中小企業とはステージが違いますが、それでも、大変なことは大変です。


これと比べると、中小企業の債務超過は、だいぶ甘い傾向があります。
まず、中小企業では債務超過そのものが珍しくも何ともないので、社長の意識も甘い。会計士さん税理士さんもそれに慣れてしまっているようなところがある。上場していないので株式市場からの資金調達など初めから考えていない。オーナー会社が多いのでM&Aで自分の会社を高く売るべく自己資本比率を上げようという意識も希薄・・・。
上場会社と違って決算書が公開されているわけではないので、秘匿しやすいし、中小企業同士の取引では、お互いの決算内容にあまり興味を示さない(与信管理が甘い、互いに恥の意識が強い、アンタッチャブル)という傾向も顕著です。
いくらか大きな影響があるのは、「銀行との関係」でしょうか。
銀行は、昔と違って「社長の熱意」とか「将来性」や「担保価値」で融資するのではなく、マニュアル的に、「財務諸表(自己資本比率、流動比率、当座比率、ROA、ROE、在庫回転率、営業キャッシュフロー、フリーキャッシュフロー、営業利益率、償却前経常利益率などなど)」や「形式要件(許認可や所在地や定款など)」で融資の可否、支援の可否を決めることが増えてきたので、いくら銀行と良好な関係を保とうとしても、債務超過に陥ると、対応が厳しくなります。 「正常先」として見られていたのが、債務超過によって「要注意先」に格下げし、長期の融資も短期の融資もNGになってしまう可能性が高まります。まあ、それでも倒産するわけではありません。融資が受けられなくなれば、返済猶予などで生き残ることだっていくらでもできるし、それをやっても外部に広く知られることもないので、苦しいながらもマイペースで事業を継続していくことは十分できます。


つまり、

・上場企業の債務超過は、インパクトが大きい。高いところから転落してしまう恐れがある。

・中小企業の債務超過は、もともと低いところにいるので、段差が小さく、インパクトが少ない。


と言えそうです。


なんか書いていて悲しくなってきました。

中小企業も、こんな低いレベルで甘んじていてはいけませんね!




尚、ここで注意が必要なのが、「粉飾決算」、あるいは「実態とかけ離れた決算」です。

上場企業は粉飾決算している可能性が非常に少ない (していてもバレにくい!?) ですが、
中小企業の多くは、証券取引所も監査法人もついていないので、稚拙ですぐにバレそうな粉飾をしている会社が山ほどあります。

粉飾する理由は、私の見聞きしている限りで一番多いのは、 「銀行から融資を断ち切られたくないから」 で、2番目に多いのが 「建設業や許認可事業などで、債務超過に転落すると、公共事業の入札や許認可の更新などができなくなるから」 というものです。
生きるために必死に粉飾した、というわけですね。 

しかし、入札や許認可の更新などでは、綿密な財務分析をされることはあまりないのが実情で、粉飾でもそのままスルーしてしまうことが多いものですが、銀行の審査はそう甘くありません。
しっかりした「貸借対照表」を提出しても、銀行はそれを鵜呑みにせず、特に「資産の部」は、それが本当に価値のある資産なのかどうか、じっくりチェックされます。

たとえば、「資産の部」の合計が1億円で、その中に価値のないゴルフ会員権2000万や減価償却していないボロい設備備品3000万円などが含まれていたら、それ自体は悪質な粉飾ではないでしょうが、「実態は△5000万円のマイナス評価だ!」とみなされて、資産の部の合計が5000万円とみなされます。ここで負債が5000万円よりも多ければ、たとえ決算書が債務超過でなくても、「実質的には債務超過である」とみなされます。

よって、中小企業の社長さんも、そういう視点で、自社の決算書をチェックする必要があります。
決算書の上っ面だけ見て、「うちは債務超過じゃないから大丈夫」などとノホホンとしていてはいけません。
ゴルフの会員権や設備備品、土地建物、保証金、車両、在庫、売掛金などを時価でみて、それを決算書の横にエンピツで書いて、実質的には資産価値はいくらか?それと比べて負債はいくらで、実質債務超過はいかほどのものか?を計算してみましょう。 こういうのを「実態貸借対照表」「実態B/S」などと呼びます。

自社の実態B/Sが把握できていれば、銀行さんとの付き合い方もおのずとわかってきます。



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プロフィール

吉田猫次郎とNEKO-KEN相談員

Author:吉田猫次郎とNEKO-KEN相談員
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【NEKO-KEN】
中小・零細企業・自営業向け事業再生コンサルタント。東京都中野区。
経営革新等認定支援機関(認定支援機関)。
末期症状の会社の倒産回避(生き残りのための応急処置)から、原因究明、デューデリジェンス、再生スキーム策定、金融機関向け経営改善計画策定支援、資金繰り改善、PL改善(黒字化)、実行支援、最後の出口へのお手伝いに至るまで、事業再生コンサルタントとしては一通りの経験と実績があります。
ミッションは「ヒト・モノ・カネの再生」。


【吉田猫次郎】
(株)NEKO-KEN代表取締役。
本名よしかわひろふみ。1968年東京生、乙女座、A型、申年、五黄土星。
著書12冊。講演300回以上。テレビ出演15回くらい。
20代のサラリーマン時代に高額の連帯保証人になり、その後、1998-2000年の脱サラ時に、借金苦・倒産危機で考えられる最悪の事態をほぼ全て体験したことがある(高利、多重、ヤミ金、怖い取立て、手形不渡り、ブラックリスト、強制執行など・・・だが自己破産はせず)。その体験記を、2001年に猫次郎と名乗ってホームページに公開したところ、思いがけずヒットしてしまい、2003年に書籍化。以後、事業再生コンサルタントに転身し現在に至る。
最近はスポーツらしいこともするようになり、2012年(44歳)から現在までにトライアスロンに8回出場、全て完走。フルマラソンも2回出場、2回完走。
嫌いな食べ物は、ダイコンと漬物。特に「たくあん」が大の苦手で、あれを食うのは、どの拷問よりも苦痛だと思う。

【相談員】
須田幸雄: CTP認定事業再生士。資金繰り改善、財務体質改善、労務、管理等に強い。

廣田守伸: CTP認定事業再生士。関西地区担当。事業再生コンサルタント歴16年以上の大ベテラン。

金久保 健: 中小企業診断士歴20数年。マーケティング、事業性評価、PL改善に強いが、事業再生コンサルタントとしても10年近い実績がある。

 
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★ このブログは長い間、吉田猫次郎ひとりで書いておりましたが、2017年8月より、3名の相談員と共同作業で投稿していきます。お楽しみに。

 
 
 
 
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