吉田猫次郎とNEKO-KEN相談員のブログ

中小企業再生や敗者復活に関する投稿が主ですが、ホームページとブログを区別し、ここでは幾分ユルめの内容になっています。

 

再生中の会社が業績V字回復を目指す?ちょっと待て!


Category: 企業再生・事業再生関連   Tags: ---
V字回復。実に良い響きです。

もしあなたの会社にV字回復のチャンスが巡ってきたとしたら、条件次第では、まっすぐにそれを目指してもいいかもしれません。

条件次第というのは、「運転資金が確保できるか?」と「売掛金の回収は間違いなくできるか?」の2点が特に重要です。(他にも注意点は数多くあります。「好事魔多し」といいますからね。Good luck comes by cuffing.)

(1)運転資金について: 多くの会社は、売上が上がれば上がるほど、運転資金を多く必要とします。売掛金入金までの資金負担や、在庫、規模拡大に伴う諸経費UPなど。
それらを自己資金でまかなえれば理想ですが、それができない場合は、何らかの資金調達が必要になります。
調達の目処が全く立たないのにいたずらにV字回復を目指してしまうと、資金不足で仕入れ資金や外注費や諸経費などが払えなくなったり、どこかでおかしくなってしまいます。

(2)売掛金の回収について: 急に大口の注文が入ったからといって、浮かれてはいけません。その会社は信用できるのか?怪しい会社ではないか?ちゃんと帝国データバンクや東京商工リザーチやD&Bレポートで調べたのか?実態のある会社なのか?
信用できるしっかりした会社でも、安心できません。大手は大手で、不条理な条件をつきつけてくることもあります。1億円の仕事をくれたけど、利益が全く出なかったとか、入金が180日後だったなんてこともあります。


運転資金について、もうちょっと掘り下げましょう。


再生中の会社(ここでは広義に、債務超過や資金繰り難などに窮して リスケジュール、私的整理、再生型の法的整理などをしていている会社を広く指します)は、新たな資金調達がなかなかできないのが普通です。銀行は一部の例外を除いてまず貸さない。銀行は安全性第一ですから。

スポンサーとして取引先などが支援を名乗りあげてきてくれれば、それはそれでひとつの良い打開策ですが、当然のことながら、スポンサーも「メリット」を求めます。何か欲しいものがあるはずです。利息が欲しいのか、配当が欲しいのか、顧客が欲しいのか、ノウハウが欲しいのか、など。その話に乗っても、良い展開になるとは限りません。理想的な展開はスポンサーと提携することによって1+1=3以上の効果があがることですが、最悪の展開は、いいところだけ取られて全てを失ってしまうことです。慎重に検討する必要がありますね。

尚、再生中の中小零細会社の多くは債務超過&運転資金枯渇状態&収益性悪化に陥っている(つまりB/SもP/LもC/Fも毀損している)会社が多いので、「会社の価値」をシビアに算定すると、ほとんど価値がないことが多いのも現実です。そんな会社に資金援助しても、あまりメリットが得られない、それどころか危険性のほうが高いと判断されることのほうが多いでしょう。

そこまで毀損している会社の場合、いくらV字回復のチャンスが目前にあっても、支援者を見つけるのは非常に困難かもしれませんね。

何もV字回復を否定しているわけではありません。私が言いたいのは、V字回復を目指すなら、管理(管理会計や与信管理など)にも目を光らせないと実現は難しいですよ、だから闇雲に集客や売上のことばかり考えていてはいけませんよ、ということを強調したいのです。

今年はどうやら昨年までより景気が上向きそうですから、尚更それを注意深く考える必要がありそうです。


私が再生中の中小零細企業に最も理想的だと思うのは、「運転資金のかからない商売」です。

・売掛金の入金サイトは極力短めに。(前金や保証金も考えたほうがいい)
・買掛金の支払いは、売掛金入金より早くしない。
・在庫は極力持たない。持つとしたら、回転は早めに。
・売掛も在庫をどうしても持たなければならないとしたら、バランスを保つために、それぞれの量を必要最低限にコントロールするとか、現金商売や前金商売の比率を増やすとか、広範囲に考える。
・利益はしっかり取ること。儲からない商売は(よほど戦略的な位置づけのものを除いて)受けない。
・以上をまんべんなく実行すること。



例えば、私の現在見ている某社は、7年以上前から新たな融資が受けられず、リスケと代位弁済をしながら返済ばかりしています。1年間で元利あわせて2000万円以上の返済をしています。(これを専門的にいうと、「財務キャッシュフローが2000万円のマイナス」になります。)

本業のほうは、工事請負業なのですが、過去のドンブリ勘定、お人好し商売をやめて、前金+売掛金は翌月末までに全額回収しています。見積もりもきっちりやって、赤字の出ないようにしています。利益の出ない仕事は受けません。受けるとズルズル習慣化してしまうから。それらを徹底した結果、現在では営業利益が2000万円以上の黒字であることに加え、キャッシュフローも2000万円以上をキープしています。(* 利益とキャッシュフローは必ずしも一致しない。勘定合って銭足らずのこともありうるから注意が要る) これを専門的にいうと、「営業キャッシュフローが2000万円のプラス」になります。

新たな設備投資などは必要とせずに上手くやっていますから(これを専門的にいうと「投資キャッシュフローはゼロ」)、単純に、財務キャッシュフローで2000万円出て行っているものを、営業キャッシュフローの2000万円プラスで補っているから、収支のバランスは取れているということになります。借入に頼る必要もなく、どうにか自己資金で会社を回し、返済もしています。大変立派なことです。

この会社は職人的にいい仕事をしているだけでなく、同業他社が受けたがらない仕事も喜んで受けています。が、その際にも、儲からない仕事は受けません。「他所が請け負わない、利益のとれる仕事」に重点を置き、しっかり稼いでいます。

現在ではすっかりこれが馴染んできて、会社の運転資金常に「月商の1-2ヶ月分」はプールできるようになりました。もう新たに借入する必要もないでしょう。ここまでに至るのに、5年近くかかりました。最近では銀行さんが「もうご融資できますよ。借りませんか?」と営業に来てくれるほどに回復しています。

V字回復のチャンスは幾度となくありましたが、運転資金がかかる、資金調達を必要とする、人員や設備などの拡大が必要となる等の理由から、あまり極端な売上UPはしてきませんでした。少しずつ、安全で無理のな範囲で、独自性を保ちながら、基本的に自力で再建していきました。多くても年間1割アップ程度にとどめました。


「キャッシュフロー経営」という言葉があります。
要点をいえば、これは、

・運転資本の最適化(最小化?)
・利益の最適化(最大化)
・設備投資は営業キャッシュフローの範囲内で行なうこと

といったようなことを意味します。

ここの「運転資本」という概念が、とりわけ再生中の中小零細企業の自力再建には重要だと思うのです。
平たく言えば、「運転資金のかからない商売」です。

そのあたりのバランスを意識しながらであれば、V字回復を目指しても構わないと思いますが、現実にはV字回復してしまうと運転資金の増加や貸倒リスクなどが伴いやすいので、あまり闇雲にV字、V字と叫ぶよりも、ゆるやかな回復でいいから、それよりも運転資本の最適化を主軸としたキャッシュフロー経営を強く意識したほうが、安全かつ長続きすることが多いのではないかな、と思います。



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プロフィール

吉田猫次郎とNEKO-KEN相談員

Author:吉田猫次郎とNEKO-KEN相談員
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【NEKO-KEN】
中小・零細企業・自営業向け事業再生コンサルタント。東京都中野区。
経営革新等認定支援機関(認定支援機関)。
末期症状の会社の倒産回避(生き残りのための応急処置)から、原因究明、デューデリジェンス、再生スキーム策定、金融機関向け経営改善計画策定支援、資金繰り改善、PL改善(黒字化)、実行支援、最後の出口へのお手伝いに至るまで、事業再生コンサルタントとしては一通りの経験と実績があります。
ミッションは「ヒト・モノ・カネの再生」。


【吉田猫次郎】
(株)NEKO-KEN代表取締役。
本名よしかわひろふみ。1968年東京生、乙女座、A型、申年、五黄土星。
著書12冊。講演300回以上。テレビ出演15回くらい。
20代のサラリーマン時代に高額の連帯保証人になり、その後、1998-2000年の脱サラ時に、借金苦・倒産危機で考えられる最悪の事態をほぼ全て体験したことがある(高利、多重、ヤミ金、怖い取立て、手形不渡り、ブラックリスト、強制執行など・・・だが自己破産はせず)。その体験記を、2001年に猫次郎と名乗ってホームページに公開したところ、思いがけずヒットしてしまい、2003年に書籍化。以後、事業再生コンサルタントに転身し現在に至る。
最近はスポーツらしいこともするようになり、2012年(44歳)から現在までにトライアスロンに8回出場、全て完走。フルマラソンも2回出場、2回完走。
嫌いな食べ物は、ダイコンと漬物。特に「たくあん」が大の苦手で、あれを食うのは、どの拷問よりも苦痛だと思う。

【相談員】
須田幸雄: CTP認定事業再生士。資金繰り改善、財務体質改善、労務、管理等に強い。

廣田守伸: CTP認定事業再生士。関西地区担当。事業再生コンサルタント歴16年以上の大ベテラン。

金久保 健: 中小企業診断士歴20数年。マーケティング、事業性評価、PL改善に強いが、事業再生コンサルタントとしても10年近い実績がある。

 
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★ 取材、講演、執筆依頼は、直接メールまたは電話またはFAX下さい。 ooneko@nekojiro.net TEL(03)5342-9488 FAX (03)3229-8329

★ このブログは長い間、吉田猫次郎ひとりで書いておりましたが、2017年8月より、3名の相談員と共同作業で投稿していきます。お楽しみに。

 
 
 
 
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