吉田猫次郎とNEKO-KEN相談員のブログ

中小企業再生や敗者復活に関する投稿が主ですが、ホームページとブログを区別し、ここでは幾分ユルめの内容になっています。

 

「DDS」と「資本性ローン」


Category: 企業再生・事業再生関連   Tags: ---
中小企業金融円滑化法が来年3月で切れた後、中小企業の資金繰りがどうなってしまうのかについて、いろいろな憶測が飛び交っています。その中で、最も多いのが、

「延命できない会社が続出し、倒産が増える」

という意見です。

私の見解は、ちょっと違います。
これについては、過去にブログとメルマガで何度か私の意見を書きました。

かいつまんでいえば、私はこう思います。

・零細企業、すなわち「保証協会つき」や「公庫」からの借入が大多数を占めている人には、あまり深刻な影響はないと思われる。(どちらも円滑化法施行よりずっと前から対応は変わっていないから)

・プロパーで借りている場合でも、そんなに劇的に金融機関の対応が変わるようなケースは少ないと思われる。(債務者区分の基準が大きく変わるわけでもないし、現実に即して考えると劇的に対応を硬化させるのは金融機関にとっても得策でないことが多いし)

・円滑化法の終了や、金融機関の対応などよりも、もっと大きな問題は、我々中小零細企業の経営環境のほうだと思う。金融機関がリスケに快く応じてくれても、またリスケの1年2年の延長に応じてくれても、それでさえも資金繰りが追いつかない中小零細は多い。そっちのほうが問題であって、円滑化法とか金融機関のほうが問題なのではないと思う。


と、そう考えています。

円滑化法が施行されるよりずっと前から、リスケはできました。
これからもできるでしょう。

ただ、リスケという手段だけでは再建できないほど体力が弱っている会社が、これからますます増えると思うのです。

ですから、あまりリスケリスケと、リスケだけにとらわれず、その他の再生手法(教科書どおりのリストラや収益改善にはじまり、代位弁済や私的整理的な方法、第二会社方式やM&Aなど組織再編型の方法、法的整理、清算まで)を、幅広く知り、取捨選択し、実行する必要があると思います。
円滑化法終了云々に関係なく。


さて、表題について。


リスケ以外の解決方法として、事業再生の世界で最近ちょっと話題にのぼることが増えてきたのが、この「DDS」と「資本性ローン」です。

「DDS」はデット・デット・スワップの略で、債権者が債務者に貸し付けている債権を「劣後」化することをいいます。たとえば、5年で返済してもらう約束だった貸付を、劣後ローン(15年後の返済にして、その15年間は元金の返済をしなくていい、また弁済順位も他の銀行より後回しでいい、といった塩漬けのような条件)に組み替えるようなことを指します。

DDSをしてもらっても債務免除にならないし、DESのように株主資本に置き換えるような処理にしてくれるわけではないので、決算書の上では「負債の部」にバッチリ載ったままになりますが、その実は、固定的な返済義務のない「自己資本」近い性質を持ちます。

DDSはもちろん、債権者側の同意がなければ成立しません。そして債権者(おもに銀行)は、よほどの条件が揃わなければDDSには応じません。なぜなら、DDSに応じると銀行サイドとしては100%の引当金を積まなければいけないし、金融検査マニュアルの「資本的劣後ローン」の要件を満たさないといけないし、またそれ以前に、わざわざDDSになど応じなくても、信用保証協会つきなら代位弁済したほうが手っ取り早く回収できるし、担保つきなら担保処分したほうが手っ取り早く回収できるからです。

そのようなことを知らずに、「DDS」という言葉に過度な期待をかけて、「ひょっとしたらウチの借金も劣後してもらえるのではいか・・・?」と考えるのは間違っています。 特に「担保つき」と「保証協会つき」は、基本的にはDDSは不可能に近いと考えたほうが良いと思います。(但し「担保つき」に関しては、再生支援協議会の新DDSではその可能性が開けてくることもあるのかもしれませんが・・・?)

とはいえ、DDSの成功例が徐々に増えてきているのも事実です。(去年ぐらいまでは再生支援協議会案件でさえも滅多に聞くことはなかったのに)

通常、DDSを成功させるためには、各都道府県の中小企業再生支援協議会のお世話にならなければなりません。金融機関側も、支援協が入らないとDDSの話さえ聞いてくれないことが少なくありません。

ですが、支援協が入らなくても、それを補って余りある経営再建計画(黒字化&債務超過解消を力説できることが必須)や、質の高い提出資料、DDSの必然性などを理路整然と訴えかけることができれば、民間のコンサルでも、あるいは完全な自力でも、DDSにこぎつけられる可能性があります。

かくいう私も、今年に入ってから、DDSに1件だけ成功しました。(あともう1件、DDSに近い準劣後?みたいな事例もあり、これを含めれば2件になります) ちなみにこれらの会社は、年商10億以上、営業利益黒字、経常利益も償却前ベースで黒字化の見通しあり、自己資本比率は現在はマイナス(債務超過)だが、債務の一部をDDSしてもらえれば、「みなし上」は債務超過解消がすぐに可能である、などといった好条件が揃っていました。リスケだけでは解決に至らないけど、DDSさえしてもらえば自己資本がプラスになり、他行から見た債務者区分も上がり、これからも継続的に支援してもらえる可能性が開けるというものでした。


もうひとつ、DDSと似ていて話題にのぼっているものがあります。
日本政策金融公庫の「資本性ローン」です。
これ、去年あたりまでは「劣後ローン」という名前でしたが、イメージチェンジのためか、資本性ローンという呼称に変わりました。

資本性ローンは前述のDDSと違い、既存の融資を組み直すものではなく、「新規の融資」です。
普通の融資と大きく違うのは、最初に融資してもらった時点から「劣後」的な扱いになっているということです。
例えば、元本返済は15年間据え置き(その間は返してはいけない!)、会計処理上は通常の借入金と同様「負債の部」に計上されるが、他の金融機関からの見立てでは金融検査マニュアル上「自己資本とみなすことができる」とされているので、変な話、資本性ローンを借りたほうが自己資本比率が(みなし上)上がり、他銀行からの融資も受けやすくなる、利率は通常の概念と違い、利益率の低いほうが低金利になり、利益率の高いほうが高金利になるという際立った特徴があります。

この資本性ローン、最近では、同業者のブログでもよく紹介されています。
期待する中小企業の社長さんも急増してきました。

ただ、これも相当ハードルが高いです。

おそらく、このブログの読者さんの多くは中小企業より零細企業のほうが多く、重度の債務超過や赤字を抱えている方も多いと思いますが、そういった方にはほとんど縁のないローンと思われます。

具体的には、

・営業利益は黒字で当たり前。経常利益も、償却前ベースで黒字でないと、落とされることが多い。
・事業規模は年商10億円以上の会社が多い。
・日本政策金融公庫といっても、国民生活事業(旧・国民金融公庫)のほうではなく、中小企業事業(旧・中小公庫)のほうが担当しているので、おのずと「そこそこの規模の中小企業」が相手となる。
・債務超過やリスケ中の会社でも融資は出る。が、重度な債務超過だといくら資本性ローンを導入しても(みなし)債務超過は解消されないので意味ないし、リスケを通り越して「延滞」や「事故」になっている会社も、信用できるかどうか等の観点から落とされることが多い。
・公庫の側としても、年間予算が限られている。

などの理由により、よほどツボにはまらないと、資本性ローンの審査に通ることは難しいと思われます。

私のクライアントで、今年1軒だけ、資本性ローンの審査に通った会社があります。地方の製造業で、金額は5000万円ほど出ました。無担保無保証です。この会社は債務超過でリスケ中でしたが、債務超過の額は「実態ベース」で3000万円ほどだったので「資本性ローン」を5000万も受けることができれば一発解消という状態でした。またP/Lのほうは償却前経常利益が3年以上連続でプラスの黒字体質でした。キャッシュフローのほうも流動性キャッシュが月商の1ヶ月以上あり、事業規模も年商10億近くあり、また製造業なので逃げ隠れされにくいという安心感もありました。だからうまくツボにはまったのでしょう。


そんなわけで、以上説明したDDSと資本性ローンの2つは、債務超過+赤字+資金難にあえぐ零細企業や自営業の皆様にはあまり使えないと思われますが、全体の流れでみると、これは大いに歓迎すべきものであると感じます。

というのは、DDSなどはつい去年か一昨年まではほとんど実例を聞いたことがなく、机上の空論のように思われているフシさえあったのに、今年は支援協もDDSに力を入れているようですし(新・DDSというのもあります。これについては解説省略)、民間や個々の専門家レベルでも、成功例をポツポツ聞くようになってきて、ゆっくりとですが、実践投入しやすくなってきたこと。また「資本性ローン」についても、まだまだ「中小企業」のみで「小規模企業(零細企業)」や自営業には馴染まないけど、これが普及すれば、ゆくゆくは民間銀行もこれに追随したり、零細企業向けにも広がったりすることが期待できるのではないかと思うからです。

日進月歩。

今は解決の道のりが遠い案件でも、2-3年後には簡単に解決できるようになっているかもしれません。
あきらめずに気長にがんばりましょう。


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プロフィール

吉田猫次郎とNEKO-KEN相談員

Author:吉田猫次郎とNEKO-KEN相談員
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【NEKO-KEN】
中小・零細企業・自営業向け事業再生コンサルタント。東京都中野区。
経営革新等認定支援機関(認定支援機関)。
末期症状の会社の倒産回避(生き残りのための応急処置)から、原因究明、デューデリジェンス、再生スキーム策定、金融機関向け経営改善計画策定支援、資金繰り改善、PL改善(黒字化)、実行支援、最後の出口へのお手伝いに至るまで、事業再生コンサルタントとしては一通りの経験と実績があります。
ミッションは「ヒト・モノ・カネの再生」。


【吉田猫次郎】
(株)NEKO-KEN代表取締役。
本名よしかわひろふみ。1968年東京生、乙女座、A型、申年、五黄土星。
著書12冊。講演300回以上。テレビ出演15回くらい。
20代のサラリーマン時代に高額の連帯保証人になり、その後、1998-2000年の脱サラ時に、借金苦・倒産危機で考えられる最悪の事態をほぼ全て体験したことがある(高利、多重、ヤミ金、怖い取立て、手形不渡り、ブラックリスト、強制執行など・・・だが自己破産はせず)。その体験記を、2001年に猫次郎と名乗ってホームページに公開したところ、思いがけずヒットしてしまい、2003年に書籍化。以後、事業再生コンサルタントに転身し現在に至る。
最近はスポーツらしいこともするようになり、2012年(44歳)から現在までにトライアスロンに8回出場、全て完走。フルマラソンも2回出場、2回完走。
嫌いな食べ物は、ダイコンと漬物。特に「たくあん」が大の苦手で、あれを食うのは、どの拷問よりも苦痛だと思う。

【相談員】
須田幸雄: CTP認定事業再生士。資金繰り改善、財務体質改善、労務、管理等に強い。

廣田守伸: CTP認定事業再生士。関西地区担当。事業再生コンサルタント歴16年以上の大ベテラン。

金久保 健: 中小企業診断士歴20数年。マーケティング、事業性評価、PL改善に強いが、事業再生コンサルタントとしても10年近い実績がある。

 
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★ 取材、講演、執筆依頼は、直接メールまたは電話またはFAX下さい。 ooneko@nekojiro.net TEL(03)5342-9488 FAX (03)3229-8329

★ このブログは長い間、吉田猫次郎ひとりで書いておりましたが、2017年8月より、3名の相談員と共同作業で投稿していきます。お楽しみに。

 
 
 
 
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