
「いろいろ考えた結果、自己破産することにしました。
理由は、将来的に、当社の事業が上向きになる見込みが、残念ながら、見えてこないためです・・・。」
この方の借金は4000万円強。(法人名義。住宅ローン除く)
うち3000万以上は保証協会や国金など政府系で、
ほかに未払い費用や買掛金が1000万ほどあります。
住宅ローンは、残債と資産価値がほぼトントンです。
よって、債務超過額は、個人と法人あわせても4000万円程度です。
売上が3000万円以下に落ちており、営業利益も出せていないため、確かに悩ましい内容です。
おそらく専門家に相談したら、10人中8人が、自己破産をすすめるでしょう。
この社長さんの考えも、いたって正常です。
自己破産したければ、すればいいでしょう。
でも、私はあえて反論しました。
まだ残された選択肢はある、頑張ってほしいと心底思ったので、社長さんを揺さぶりました。
「事業が上向きにならないだけで絶望視するんですか?横ばいや下降傾向でもいいとは思わないんですか?昨今、いくら努力しても減収減益を余儀なくされてる会社はいくらでもありますよ?それでも皆さん生きている。生きてるだけ、存続だけで立派だと、私は思うんですけどねえ」
「自己破産すれば、確かに負債はほぼ確実になくなります。確実に借金の問題からは解き放たれて楽になるでしょう。でも、それは借金・負債の部分が楽になるだけで、それ以外の部分は楽になれるという確証はありませんよ。自己破産して借金がゼロになっても、その後の生活や人生で苦しんでいる人は多い。要はあなた次第なんです。自己破産で負債をゼロにするかどうかは、全体の中ではさほど大きな問題ではない。」
「業績安定か、さもなくば自己破産かという、100か0かの二者択一のような考え方は、ちょっともったいないと思います。それはまるで、健康でなければ死ぬしかないと言ってるようなものです。病気がちだけど生き抜くとか、弱者だけど弱者なりに生き抜くとか、そういう人や会社も沢山いるじゃないですか?」
「置かれている現状を専門的にみても、小規模法人、協力者不在、スポンサー確保困難、公的金融機関からの借入比率が多い等を勘案すると、個人再生手続や第二会社方式やサービサーを使った私的整理などにはあまり向かない内容だけど、一括請求や代位弁済されてもメゲずに交渉して、しばらく猶予してもらって長期分割返済させてもらう余地はじゅうぶんあるし、本業の赤字を食い止めて、減収ながらも黒字を出す方策だって必ずとれるはず。そのやり方だと借金はなかなかなくならないけど、べつにいいじゃありませんか。借金を、債務超過を、綺麗になくさなければ事業再生というわけではありません。借金としたたかに共存し、売上低迷の中でもギリギリ黒字を出し、少なくてもいいからとにかく稼いで家族を養い、ゆっくりでも借金を返し、僅かでも税金を払い、残ってくれた僅かな従業員に給料を払い、それだけでもじゅうぶん立派だと私は思いますよ。」
「そういうのは事業再生とは呼ぶべきではなく、維持とか延命とか言ったほうが合ってるのかもしれないけど、私はそれでもいいと思う。継続は力なり。石の上にも三年。底辺を這いつくばりながらでも維持していくうちに、しだいに逆境に慣れてきて、いろいろ学習するようになり、最後は見事に再生できたという人も私は沢山知っています。いや、絵に描いたようなV字的な再生ができなくても、何度もいうように、このご時世では維持・継続していくだけでも意味があることだと思うんですよ。」
「べつに、絶対自己破産するな!と言っているわけではありません。したほうがいいケースも多々あります。
どうしても自己破産したいなら、どうぞ進めてください。
でも、その前に、私のこうした反論を論破できるよう、今一度、考え直してみて下さい。」
猫
Comments
ありがとうございます。
自己破産しなくても債務を凍結する方法はあるし、それより日々の生活費を事業で稼ぎ出すことの方が重要ですね。
借金に負けず、子供たちも大学生活をエンジョイしており、幸せな毎日です。
あの逆境があったからこそ、精神的に柔軟でタフになれたと思います。
人生には山あり谷ありですが、楽しんで乗り越えていきましょう。
もちろん、家族、従業員、債権者に対する考えも終えての結果ではないでしょうか?
安楽死を勧めず、延命治療を勧める医師は多いでしょうか?
自己破産後サラリーマンをしていますが、
この文章を見てジーンときました。
かつての私と同じよう境遇の人にもっともっと
金融リテラシーの強化の普及に頑張ってください!
微力ながら私もお手伝いします。