吉田猫次郎ブログ

事業再生、倒産回避、資金繰り改善、連帯保証人問題、借金自殺防止 ・・・などが専門ですが、ここはブログなので、もっと気楽にいろいろ書きます。

 

「為替デリバティブ」で出血し続けている中小企業


Category: 企業再生・事業再生関連   Tags: ---
(少し難易度の高い話です。興味ない方は軽く読み飛ばして下さい)


我がNEKO-KENに相談に来られる方のおよそ8割以上は中小企業というよりも零細企業で、しかも完全な債務超過、資金ショート状態の会社なのです。
・・・が、たまに、黒字体質のかなりしっかりした「中小企業」が相談に来られます。

その中で、これまた少数ですが、本業でせっかく黒字(「営業利益」が出せている)のに、営業外で損失が出続けている会社からの相談が来ることがあります。特に去年から今年にかけては、「為替デリバティブ」で大きな損失を出している貿易会社から何件か相談を受けました。

素人の方のためにイメージしやすく例えると、昔バブル期に「財テク」というものが流行って、バブル崩壊で「財テクの失敗で本業以外のところで多大な損失が出て、たちまち債務超過に転落した」会社が数多くありましたが、ざっくりいえばそんな感じの相談です。

本業で稼いでも稼いでも、デリバティブ損失が生じつづけているために経常利益がマイナスになり、結果、バランスシートまで傷み、せっかくの営業黒字体質なのに、気がつけばB/S債務超過、P/L経常赤字になり、そんな財務内容の会社には銀行も融資できませんから資金繰りにも詰まり、私がよく言う「倒産の3要因」であるBS債務超過、PL赤字、CF資金難の3拍子を抱えて経営危機に瀕してしまうわけです。
業績のすこぶる安定している優良企業だった会社が、僅か数年のうちに・・・。

普通、輸出入を手掛ける貿易会社であれば、為替の予約などは日常業務でつきものですが、「デリバティブ」まで容易には手を出せません。「デリバティブ」の仕組みは大変複雑なので(私にもよくわかりません)、わからないものに手を出すこと自体が大きなリスクになるはずなので・・・。もしデリバに手を出すとしても、リスクを承知で、少しだけおそるおそるやってみる程度でしょう。

にもかかわらず、リーマンショックより少し前の2006-07年前後の時期に、銀行に提案されて、為替デリバティブに手を出した中小企業が相当多いようなのです。


当時は1ドル108円とか110円とかそんなレートでしたが、今は1ドル80円前後です。
たとえば、10,000ドルの自動車を輸入するのに、当時は108万円かかったのが、今なら80万円で仕入れられるわけです。
逆に、今のレートなら80万円で仕入れられるのに、108円当時のレートをいまだに適用しなければならないとしたら、実質108万円で仕入れなければならないことになり、競争力はガクンと落ちます。
輸入業者にとって、この痛手はあまりにも大きいですね。

でも、為替デリバティブ取引では5年以上の長期間で契約していることが多いので(x年x月にドルをxxx円レートでxxx万ドル買うとか・・・)、これだけ円高が進むと、もう大変です。
これから先はどうなるかわかりませんが、少なくともここ1年の超円高のご時勢では、「含み損」が膨れ上がる一方だといっても過言ではありません。

応急処置としては、毎月の決済(ドル買い)と同時に同額のドルを売るという方法もありますが、これだと差損分がどんどん損失として膨らんでしまいます。
または、決済のたびに短期の手形貸付に切り替えるという方法もよく取られていますが(銀行がよくこの方法を提案してくる)、これも借金という形に変わってどんどん膨らんでいくことになるので、解決方法といえるかどうかは疑問です。
中にはこのような応急処置をしながら、年間で数億円ものデリバティブ損失を計上している中小企業もあります。資金繰りは凌げても、B/SとP/Lは急速に傷んでいくわけです。


ところで、為替デリバティブってそもそも何でしょうか?


『為替デリバティブリスクを回避する方法』(弁護士 本杉明義著・PHP)という本から引用しましょう。

≪ 銀行が中小企業に勧誘、販売した為替デリバティブ取引には、「通貨オプション取引」と「クーポンスワップ取引」があります。
 「通貨オプション取引」は、ある一定の期日に一定の金額で外貨を購入することができるオプション(権利)を顧客が銀行から購入する(これを「オプションの買い」といいます)と同時に、顧客が銀行に売却する(これを「オプションの売り」といいます)ものです。(中略)
 しかも、今回問題となっている「通貨オプション取引」は、五年から長いものですと十年間、同じ条件の「オプションの買い」と「オプションの売り」を何十本も束ねて、契約段階で取引しているのが特徴です。
 プロですら数年先の為替を予想することが困難なのに、五年から十年もの先まで「オプションの売り」を何十本も一度に行っているのです。
 オプション取引を知っている人であれば、「オプションの売り」が利益限定・損失無限定のきわめて危険な取引であることを皆知っています。(27-28ページ)≫


いかがでしょうか?

「契約したものだから仕方ない」「リスクをある程度承知でやったのだから仕方ない」「銀行もちゃんと説明してくれたから仕方ない」という社長さんも多いでしょう。でも、よーく聞いてみると、説明は確かにあったけれども超円高になったときのリスクまでは言及されなかったとか、契約はしたけれど銀行の強い押しや力関係で断われなかったという方も少なくありません。そのような場合は、今一度、抜本的な対策を考えてみるべきではないでしょうか。

恥ずかしながら、私にとってもこの問題は「手探り」で「未体験ゾーン」に近いです。
私は20代のときに商社で輸出入の貿易実務を約6年間、その後、家業の貿易会社でも輸出入をかれこれ5年以上やっているので、貿易為替については人よりちょっとは詳しいほうだと思います。貿易会社特有の銀行取引(L/Cとかユーザンスとか為替予約とか)についても一通りは経験値があります。
だけど、「為替デリバティブ」についてはほとんど触れる機会がなく、勉強もしてきませんでした。でも、そうも言ってられないので、本を何冊か買い漁って勉強しているところです。

特に、この問題の解決方法として昨年あたりから脚光を浴びている「ADR」については、私も本腰を入れて勉強しなければならないと痛感しています。 ちなみに私が最近読んだ本の中で参考になったのは次の2冊です。



為替デリバティブ取引のトリック為替デリバティブ取引のトリック
(2011/04/22)
佐藤 哲寛

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「為替デリバティブ」リスクを回避する方法「為替デリバティブ」リスクを回避する方法
(2011/09/15)
本杉 明義

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Comments

 
「管理人のみ閲覧」でコメント下さった方へ

はい、そのニュース記事に書かれていることと内容はほぼ同じです。
(デリバティブは本当にわかりにくく、記者さんでも全くわからない人が多いので、書く人によって書き方が大きく変わりますね)

下の記事なども、問題提起している内容はおおむね同じです。

http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20110907/ecn1109070621001-n1.htm

http://blog.livedoor.jp/kawasederivatives/archives/2782151.html

ご参考まで。
 

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プロフィール

吉田猫次郎

Author:吉田猫次郎
中小・零細企業・自営業向け事業再生コンサルタント。認定事業再生士(CTP)。経営革新等認定支援機関(株)NEKO-KEN代表取締役。
本名はホームページや書籍に記載。
著書多数。講演・メディア出演多数。
1968年東京生、乙女座、A型、申年、五黄土星。

20代の商社マン時代に高額の連帯保証人になり、その後、1998-2000年の脱サラ時に、借金苦・倒産危機で考えられる最悪の事態をほぼ全て体験したことがある(高利の連帯保証人、ヤミ金の怖い取立て、手形不渡り、ブラックリスト、強制執行など・・・だが自己破産はしなかった)。

趣味は釣り、アウトドア全般、ほか。

最近はスポーツらしいこともするようになり、2012年(44歳)でトライアスロンのオリンピックディスタンスに初挑戦&完走。2014年(45歳)でフルマラソン初挑戦&完走。2015年(46歳)にはトライアスロンのアイアンマン70.3に初挑戦&完走。2016年も完走。徐々にメタボ解消。だがすぐにリバウンド。

嫌いな食べ物は、ダイコンと漬物。特に「たくあん」が大の苦手で、あれを食うのは、どの拷問よりも苦痛だと思う。

 
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