吉田猫次郎ブログ

事業再生、倒産回避、資金繰り改善、連帯保証人問題、借金自殺防止 ・・・などが専門ですが、ここはブログなので、もっと気楽にいろいろ書きます。

 

中小企業金融円滑化法延長の是非について。リスケジュールの意味について。


Category: 企業再生・事業再生関連   Tags: ---
ここでもう一度おさらいしましょう。

拙著『震災後に倒産しない法』(サンマーク出版) をはじめ、当ブログやメルマガ等あちこちに今まで再三書いてきましたが、リスケジュール(返済条件の緩和を金融機関にお願いすること)は、資金繰りをラクにする効果はあるものの、経営を改善させる効果があるとは言い切れません。あまり過信したり、使い方を誤ったりすると、単なる延命だけに終わってしまいます。いや、延命どころか、他のもっと大事なものを失って逆効果になることさえあります。

今日のニュースによると、「中小企業金融円滑化法」(通称 モラトリアム法)が、あと1年延長されることが決まりそうです。正直、私は延長されないと思っていましたので、ちょっと驚きでした。といってもそれは、単に意外だったから驚いただけであり、べつにこのニュースが日本の中小企業を狂喜させるとか、中小企業の倒産を激減させるとか、そんなことを期待しているわけではありません。延長されようがされまいが、どっちでも良いと思っています。まあ、「しないよりはいくらかマシか・・・」という程度でしょうか。

理由は次のとおりです。


1.中小企業金融円滑化法が2009年12月から施行されたおかげで、リスケジュールが格段にしやすくなりました。これは大変良いことです。それまでは、資金繰り系のコンサルタントに高い報酬を払わなければ銀行交渉がうまくいかないことも多かった。それが金融円滑化法施行後は、コンサルなどに頼む必要もなく、自力でかなり交渉できるようになってきました。

2.しかし、そもそもリスケジュールだけで経営改善ができるものではありません。少し計数感覚のある社長さんなら当然わかると思いますが、リスケジュールでラクになるのは「資金繰りだけ」です。B/Sの債務超過解消や自己資本比率UPが実現できるわけでもないし(つまり借金はリスケだけでは減らないし)、P/Lが黒字化するわけでもありません。リスケだけでは、赤字企業は赤字のままです。債務超過企業は債務超過のままです。

3.私のところに相談に来られる社長さんの多くは、「債務超過」と「赤字」と「資金繰り難」(これを私は「倒産の3要因」と呼んでいます)の3拍子を抱えています。(銀行の債務者区分でいえば「要注意先」より下の「破綻懸念先」あたりが平均的なところです。) この3拍子揃った会社は、もはやリスケだけでは再建は困難です。それどころか、銀行に利息を支払う余裕すらないので、元金だけでなく利息もストップしなければ追いつかない会社や、担保売却、代位弁済、私的整理、法的整理まで着手しないと再建が図れない会社も少なくありません。このような会社にやみくもに「リスケ」を勧めるのは、罪悪ですらあります。

4.ひとつ例をあげましょう。2年前のある日、自殺遺族の方が私のところに相談に来られました。この方のお父様は年商ウン億円の会社を経営していましたが、構造不況により売上がウン千万円に急落。いくらコストを削減しても赤字が続き、資産の倍以上の債務超過、売上の5倍以上に相当するウン億円もの借金がありました。仕入れ支払いも数千万円規模で遅延していました。税金も数百万円滞納していました。にもかかわらず、お父様は遡ること数年前から某資金繰り専門のコンサルタントと契約し、そのコンサルの指示に従って、銀行に「リスケジュール」をお願いし、元金は猶予してもらったものの、月70万円以上の利息をキッチリ払っていました。税金滞納や仕入れ遅配している彼にとって、月70万円以上の利息を払う余裕など全くないはずなのに、なによりも最優先で銀行に利息を払っていたのです。その結果・・・、仕入れ先と税務署からの取立てが厳しくなり、納品もストップされ、生活費にも困窮し、本業がどんどん蝕まれ、悪循環に陥り、追い詰められたお父様は自殺してしまったのでした。
この話を遺族の方から聞いた私は、診断・処方を誤った某資金繰りコンサルタント(リスケの専門バカ)に怒りをおぼえました。
リスケは万能薬ではない!!

5.リスケだけでうまく解決が図れる会社ももちろんあります。まだ大幅な債務超過には至っておらず、営業利益も改善次第で出すことが可能な会社です。「本業は黒字体質だけど、運転資金が枯渇気味で、融資もこれ以上はちょっと出そうにない。それに、資産を処分しても現金化できないし、借入をこれ以上増やすのも得策ではない・・・」といった会社には、リスケは非常に向いているといえるでしょう。

6.「債務超過」と「赤字体質」と「資金繰り難」の3拍子揃った会社は、リスケするなとは言わないけど、リスケだけでは解決は図れないので、リスケはあくまで「延命」「つなぎ」と割り切り、そのつなぎの間に、もっと大掛かりな経営改善をしなければなりません。(尚、重症度合いによっては「リスケなんかするな!利息を払う余裕すらないでしょ!?代位弁済や担保処分や私的整理や法的整理まで考えなきゃいけない段階にきてるんですよ!今真っ先にやるべきことは止血です!元金はもちろんのこと、利息も今すぐ止めて下さい!事故や傷なんて覚悟のうえです!」と言い切らなければならないケースもあります。)

7.国がそういったことまで見越して、つまり、中小企業の社長さんの多くが実抜計画(実現性の高い抜本的な経営改善計画)をキチッと立て、リスケジュールで一時凌ぎをしている間に明るい経営改善に向かって邁進できるものと期待して、このたび中小企業金融円滑化法を延長させることに決めたのかどうか・・・、私にはわかりません。

8.私は国を批判するつもりはありません。リスケジュールを単なる延命策と断じるつもりもありません。リスケは数ある有効なツールのひとつです。それをしやすく導いてくれた国には感謝感謝です。ただ、リスケは工具にたとえればプラスドライバーくらいの幅広い有用性があることは確かですが、中にはプラスドライバーだけでは修理できない機械や、プラスドライバーなど全く役に立たない機械もあります。私たちはそれを自覚しなければなりません。
つまり、私は国に向けて物申すのではなく、リスケジュールをあてにしている中小零細企業の社長さんに向けて言いたいのです。「リスケだけを過信しちゃいけませんよ」と。

9.尚、中小企業より規模の小さい、零細企業や自営業にとっては、中小企業金融円滑化法が延長されてもされなくても、結果はあまり変わらないかもしれません。
というのは、少し前にも当ブログで書きましたが、零細や自営の多くは「信用保証協会つき」や「国金」からの借入が多くを占めているからです。「保証協会つき」のリスケは、実質的には保証協会が可否を決めています。保証協会がリスケにOKすれば銀行もOKします。そして保証協会は、金融円滑化法の有無にかかわらず、昔から同じような基準で、リスケの相談には柔軟に応じてくれていました。この流れは今後も変わらないでしょう。国金のリスケもまた、10年以上も前から店頭窓口に条件変更依頼書の用紙が備え付けられていたほどで、今にはじまったことではありません。条件変更には柔軟かつ紳士的に応じてくれていました。よって、保証協会や国金をメインに借りている小規模企業は、今回の法律がどう変わろうと、大して変わらないのではないかと思うのです。(知り合いの事業再生に強い弁護士さんや税理士さんもおおむね同意見でした。)


10.マスコミの論調で、「金融円滑化法が切れたら倒産が増えるだろう」というのをよく見かけますが、私はそうは思いません。
あまり「円滑化法延長が~」「資金繰りが~」「金融機関が~」と騒ぐよりも、「リスケだけでは根本的解決にならないから、リスケはあくまで一時凌ぎと割り切って、もっと大事なこと、つまり金融調整だけに依存しない経営再建や、事業の黒字化などを真剣に考えるべきだ」ということを、私たちはもっと強く訴えかけなければならないと思うのです。






* ちょっと宣伝。今年5月に出した本ですが、その道のプロに大好評です。↓


震災後に倒産しない法震災後に倒産しない法
(2011/05/20)
吉田猫次郎

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Comments

記事の紹介 
村西監督がサバイバル術?を伝授しています。
http://www.news-postseven.com/archives/20111229_77877.html?PAGE=1
悩める方々の参考になればと思います。
 

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プロフィール

吉田猫次郎

Author:吉田猫次郎
中小・零細企業・自営業向け事業再生コンサルタント。認定事業再生士(CTP)。経営革新等認定支援機関(株)NEKO-KEN代表取締役。
本名はホームページや書籍に記載。
著書多数。講演・メディア出演多数。
1968年東京生、乙女座、A型、申年、五黄土星。

20代の商社マン時代に高額の連帯保証人になり、その後、1998-2000年の脱サラ時に、借金苦・倒産危機で考えられる最悪の事態をほぼ全て体験したことがある(高利の連帯保証人、ヤミ金の怖い取立て、手形不渡り、ブラックリスト、強制執行など・・・だが自己破産はしなかった)。

趣味は釣り、アウトドア全般、ほか。

最近はスポーツらしいこともするようになり、2012年(44歳)でトライアスロンのオリンピックディスタンスに初挑戦&完走。2014年(45歳)でフルマラソン初挑戦&完走。2015年(46歳)にはトライアスロンのアイアンマン70.3に初挑戦&完走。2016年も完走。徐々にメタボ解消。だがすぐにリバウンド。

嫌いな食べ物は、ダイコンと漬物。特に「たくあん」が大の苦手で、あれを食うのは、どの拷問よりも苦痛だと思う。

 
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