吉田猫次郎とNEKO-KEN相談員のブログ

中小企業再生や敗者復活に関する投稿が主ですが、ホームページとブログを区別し、ここでは幾分ユルめの内容になっています。

 

貸金業者よりも、仕入先の取立てのほうがよっぽどキツい(痛い)


Category: 企業再生・事業再生関連   Tags: ---
先日、こんな話を聞きました。

【基本情報】

 食品製造販売業。業歴30年。年商1.8億。営業黒字体質だが、10年ほど前に大きな損失を出したときに借りた高利の借金返済がずるずる続いたのと資金繰りのやり方が下手だったのが災いして慢性的に支払利息が異常に多く、資金繰りは常に火の車で、ついに半年ほど前に2回目の手形不渡りを出してしまった。だが現在も事業継続している。(注: 不渡りイコール倒産・破産ではありません。詳しくは私のホームページ等参照。)

 ヤミ金と高利ノンバンク類は信頼できる弁護士に任意整理を依頼した。結果は、引き直しでゼロ以下になり4ヶ月で解決。銀行のほうは残債が1億円ほどあり、3つの田舎の土地建物を担保提供しており、不渡りを出したときに期限の利益喪失し、保証協会つきの分は全て代位弁済になった。保証協会とは話し合って暫定的に10万円ずつの分割払いになった。プロパー分は様子見の状態。抵当権は上位の全てが保証協会に引き継がれ、競売にはなっていない。こうして、借入金返済負担はグッと減っていった。

 日々の相談はおもに私(猫)が受けている。但し私は法律家ではないので、高利の任意整理や法律相談など法律事務的な行為は弁護士に一任し、私の役割は専ら経営再建に向けた計画立案やコーディネートなどである。

 本業のほうも幸いにして不特定多数の個人客が主なので不渡りによる風評被害等はなく、売上は横ばい。いや、最近はある追い風が吹いて上昇しそうな雰囲気である。この分ならどうにか破産も第二会社方式等もせず、今の会社のままで再建が図れそうだ。保証協会億近い債務には連帯保証人が3人もついているので、是が非でも破産などせず自力再建したい。(もちろん無駄な資産の処分や費用のカット等は欠かせない)

 負債総額も現在は1.1億ほどに減っている。担保価値は6千万ほど。税金滞納なし。後継者もいる(但し後継者も連帯保証人)。売上は現金主体なので、資金繰りのしかたを誤らなければ借入に頼らなくとも商売できる。少なくとも廃業する必要はない。十分やれると見た。万事うまくいけば、5年以内に債務超過を解消できるだろう。

 問題は、仕入先である。これは社長さんがいけないのだが、いま現在、仕入先4件に計600万円ほど支払いが遅れている。不渡りを出した当初は1200万円以上遅れていたのだが、最優先で仕入れ代金を支払ってきて、残り半分、買掛残はA社200万,B社180万,C社120万,D社100万ある。あと一息という感じである。


【本題 ~ 仕入先からの取り立て】

 仕入先A社とB社の取立てが、日に日に厳しくなっていった。どちらも大企業。1ヶ月ほど前から「念書を書に実印を押せ」「印鑑証明を出せ」「息子と娘を連帯保証人に追加しろ」といった要求が増えてきた。実印つきの念書に加えて印鑑証明をうかつに渡してしまうと、公正証書を作られてしまう恐れがある。公正証書を作られると、裁判にかけずに強制執行される恐れが出てくる。まあ、払えない社長さんが悪いのだからそのくらいの覚悟は本来必要なのだが、問題は、その念書に書く支払い条件だ。A社もB社も「明日までに50万円払え。残りは2ヶ月以内に全額払え」といった要求をしてきている。しかも息子と娘を連帯保証人にしろと。そんなの絶対無理。

 ちなみにC社とD社は、もう少し長い分割払いに同意してくれて、かろうじて良い関係が保たれている。取引も続けさせてくれるそうだ。「長年儲けさせてもらってますから・・・頑張って下さい!」と。
 でもA社とB社はもはや取引継続は無理。あとは残債を払うだけの関係。

 債権者平等の原則的にみれば、A社とB社に優先して多く払うのは良いことではない。取立てが厳しいからって譲歩すべきではない。銀行や保証協会やC社D社には猶予してもらっているのだから、公平性に欠けることになる。(ちなみに社長や家族は半年以上給料をもらっていない。その他の従業員もぎりぎり。)

 社長はA社B社への念書・印鑑証明の要求を丁重に断った。
「払う意思はあります。でも明日50万、2ヶ月以内に全額なんて絶対無理です」
「もう少し長い支払い計画を立てさせて下さい」と。
でも応じてもらえず、毎日のように訪問され
「子供の使いじゃないんですから、手ぶらでは帰れませんよ!」
「このまま居させてもらいます!」という日も珍しくなかった。

 1週間ほど前、急にA社が来なくなった・・・と思ったら、簡易裁判所から「支払督促」が送達されて来た。これは大歓迎だ。1対1で感情的に話し合うよりも、裁判所が間に入ってくれたほうがよっぽどスマートだから。社長は同封されていた異議申立書に「月5万円ずつの分割払いで和解したい」と書いて返送した。

 目下最大の問題はB社だ。B社は執拗で、毎日のように来る。A社のように法的にやってもらったほうがいいのだが、ある日、社長が「法的にやってもらって結構です」と言ったら、B社は「そりゃ法的にやるつもりは満々ですよ。でもね、うちが法的にやったら、それが公示されて全国に広まって、おたく、商売できなくなっちゃいますよ?それでもいいの?」と言われた。社長はそこまで詳しくなかったので、ちょっと不安になった。

 このままでは埒が明かない、仕事にも支障をきたす。
考え抜いた社長は、弁護士にアドバイスを求めたうえで、「調停」を起こすことに決めた。
「債務弁済調停」だ。
数日前、簡易裁判所へ自分で行き、申立書は無事受理された。
帰ってからすぐに受理票をB社に手渡しした。(この日もB社は取り立てに来ていた)


【弁護士から聞いた予備知識】

1.調停を申し立ててから調停が終わるまでの間は、基本的に、直接の取立てができない。裁判所の調停室で紳士的に話し合うのが筋である。調停外でガミガミ追い込むのは許されない。よって、調停を申し立てれば、だいぶ静かに過ごせるはず。

2.調停は(ちょうど離婚調停をイメージすれば容易に想像できると思うが)、ひっそりと内密に行われる。官報などに載って周囲に知られて恥ずかしい思いをするようなことはない。破産等とゴッチャにしてはいけない。

3.調停は「返すための」「話し合い」である。踏み倒す手続きではない。あくまで、A社には全額お支払いしたい。誠意の限りを尽くしたい。でもB社にだけ優先して払うことはできないし、他はおおむね話がついているし、B社の要求とこちらの資金余力にはあまりにもギャップがあるし、当人同士の話し合いもずっと平行線だったから、苦肉の策として調停という話し合いの手段を選んだにすぎない。

4.調停は、債権者A社にとっても決して悪い話ではない。調停で決まったことは、裁判の確定判決や公正証書と同じ強制力(強制執行する権利)がある(これを「債務名義」という)。 法的に債権が確定されるのだから、B社の財務内容もそう悪くはならないはず。回収も今よりずっとスムーズに行くはず。毎日取立てに来るコストも削減できるはず。

5.付け加えれば、あなたの会社は既に不渡りを出しており、不渡り情報は交換所経由でそれこそ全国に広まっているのだから、いまさら何を恐れる必要があるか? 本当なら不渡りを出した時点でジ・エンドだったはず。ほとんどの会社が、不渡りを出した時点で弁護士に介入してもらってそのまま破産手続きへ移行する。そうなればB社は1円も回収できなかっただろう。それが今、破産せずに再起中であり、がんばって全額払おうとしているのだから、その点は胸を張っていい。


【そして現在】

 ところが、B社の担当者はよっぽどバカのようで、

「あなたの会社はもうオシマイですよ!」
「このことが全国に広く伝わって、どこも相手にしてくれなくなる。仕入れもできなくなるよ」
「裁判所が入ると全ての資産を調べらますからね!」 (←注:破産じゃないんだし、ましてや裁判所は調査権がないんだら、こんなことはない)

 などと捨てゼリフを吐いて帰っていったそうである。

 そして、昨日も電話で同じようなことをクドクドと言ってきたそうである。




・・・いかがでしょうか?

 もちろん元をたどれば約束どおりの支払いができない社長さんが悪いのですが、
それにしても、このB社の担当者は無教養で痛い人だなあ~、という印象ですね。

 さらに言えば、この社長さんは、B社とは30年以上取引しているそうです。言い換えれば、B社はその社長さんに30年以上も儲けさせてもらっているわけです。大事なお得意さんではありませんか?しかもこの会社は潰れたわけではない。再起しかけている。なのに、たかだか180万円の回収のためにここまで追い込んでいるのです。馬鹿ですね。
 ここで紳士的に話し合って、「条件次第では取引も再開させて頂きます!」「当社としてもできるだけのことはしたいので、どうか正直に会社の現況や今後の再建計画についてお聞かせ願えませんか?」と言えるくらいの懐の深さがあれば、将来この会社が再建できたときに、また大事なお得意さんになってくれる可能性もあったのに。サラリーマンとしても商売人としても三流だなあ、と。少なくとも私はそう感じました。




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Comments

 
最近取引先の取立てが非情にきつくなってきました。本当はこちらが悪いのですが本当に払えなくて現在稼動している先優先になってしまうのです。金融機関系は全て整理しても追いつかないのが現実で少額支払をしたりしてますが相手も決して楽ではないのでしょう。最近不義理にしている取引先にバンバン裁判にかけられてます。大体30万から50万くらいの債権です。今までこれぐらいではこんなことしてこなかったのですがお互い厳しいのだと思います。真摯に受け止め裁判所を受けてますが一番きつかったのが少額訴訟のときでした。額が30万弱一括支払が出てしまいた。滞納も3ヶ月ぐらいのところでいくら分割のお願いをしても相手が飲まず調停員も【なぜ商売してるのにはらえないのですか?」と聞く耳持たずで最近の零細企業の苦しさをわかってもらえませんでした。通常訴訟の調停員はもう少し話を聞いてくれているように思います。最近この様な相談多くないですか?裁判で分割払いをお願いするにはどうしたらいいですか?教えて下さい。
少額訴訟のお金は今かき集めてます。強制執行がこわいので。。。
 

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プロフィール

吉田猫次郎とNEKO-KEN相談員

Author:吉田猫次郎とNEKO-KEN相談員
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【NEKO-KEN】
中小・零細企業・自営業向け事業再生コンサルタント。東京都中野区。
経営革新等認定支援機関(認定支援機関)。
末期症状の会社の倒産回避(生き残りのための応急処置)から、原因究明、デューデリジェンス、再生スキーム策定、金融機関向け経営改善計画策定支援、資金繰り改善、PL改善(黒字化)、実行支援、最後の出口へのお手伝いに至るまで、事業再生コンサルタントとしては一通りの経験と実績があります。
ミッションは「ヒト・モノ・カネの再生」。


【吉田猫次郎】
(株)NEKO-KEN代表取締役。
本名よしかわひろふみ。1968年東京生、乙女座、A型、申年、五黄土星。
著書12冊。講演300回以上。テレビ出演15回くらい。
20代のサラリーマン時代に高額の連帯保証人になり、その後、1998-2000年の脱サラ時に、借金苦・倒産危機で考えられる最悪の事態をほぼ全て体験したことがある(高利、多重、ヤミ金、怖い取立て、手形不渡り、ブラックリスト、強制執行など・・・だが自己破産はせず)。その体験記を、2001年に猫次郎と名乗ってホームページに公開したところ、思いがけずヒットしてしまい、2003年に書籍化。以後、事業再生コンサルタントに転身し現在に至る。
最近はスポーツらしいこともするようになり、2012年(44歳)から現在までにトライアスロンに8回出場、全て完走。フルマラソンも2回出場、2回完走。
嫌いな食べ物は、ダイコンと漬物。特に「たくあん」が大の苦手で、あれを食うのは、どの拷問よりも苦痛だと思う。

【相談員】
須田幸雄: CTP認定事業再生士。資金繰り改善、財務体質改善、労務、管理等に強い。

廣田守伸: CTP認定事業再生士。関西地区担当。事業再生コンサルタント歴16年以上の大ベテラン。

金久保 健: 中小企業診断士歴20数年。マーケティング、事業性評価、PL改善に強いが、事業再生コンサルタントとしても10年近い実績がある。

 
★ 「相談」をご希望の方は、ホームページのほうに申込方法等を記載していますのでご覧下さい。有料と無料があります。 → 吉田猫次郎ホームページ

★ 取材、講演、執筆依頼は、直接メールまたは電話またはFAX下さい。 ooneko@nekojiro.net TEL(03)5342-9488 FAX (03)3229-8329

★ このブログは長い間、吉田猫次郎ひとりで書いておりましたが、2017年8月より、3名の相談員と共同作業で投稿していきます。お楽しみに。

 
 
 
 
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