
私が連帯保証人だった1990年代は、それはもうひどい時代でした。
経営と関係のない親類縁者や取引先などが連帯保証することもザラ。
「根保証」はノンバンクでも銀行でもしょっちゅう。
「包括根保証」(いったん連帯保証した後で主債務者がもっと借りても、連帯保証の上限が定められておらず無制限に連帯保証させられてしまう。例えば300万円だけ連帯保証したつもりが後で3億円に膨れ上がっていたなんてことも・・・)も、銀行で普通に見かけました。
少しずつ改善されてきたのは、2001年頃からだったと記憶しています。
以下、その経過を、私の記憶の範囲でざっと並べてみます。
・ 1999~2000年に商工ローンの悪質な取り立て(腎臓売れ、根保証、40%前後の金利、公正証書等)が社会問題化した。
・ その少し後から、民間銀行が、「無担保、個人保証は社長1人だけでOK」のプロパー融資を次々に売り出した。
(都民銀行のスモールビジネスローン、三井住友のビジネスセレクトローン、東京三菱の融活力など)
・ 2001年、消費者契約法が施行される
・ 2005年、包括根保証が撤廃
・ 2006年、信用保証協会が、第三者の連帯保証人を取らないと新聞発表
・ 2007年、貸金業法が段階的に改正・施行
・ 2009年、中小企業金融円滑化法によりリスケがしやすくなり、会社が突然死しにくくなる
・ 2011年?、金融庁が各金融機関へ、過剰な保証?を自粛?するよう通達
・ 2014年、「経営者保証に関するガイドライン」 適用開始
・ 2018年、信用保証協会が「信用補完制度の見直し」 適用開始
・ 2020年、「民法の一部を改正する法律」 施行予定
そして現在は、借入の際に、第三者の連帯保証人を取らないのは当たり前になっています。
良い時代になりましたね。
ところで、昨今では、企業の数が約380万社あるのに対し、後継者不足に悩む会社の数が推定120万社以上あるのが問題視されています。このため、国も支援機関も民間コンサルも、皆、「事業承継」(じぎょう・しょうけい)を一大テーマにしています。
事業承継コンサルタント、事業承継補助金、事業承継税制などなど・・・。
そのような中で、事業承継を阻む要因のひとつとして問題視されている「経営者の個人保証」(=連帯保証ですね)を、もう少し改善しようという動きが出てきています。以下、新聞記事抜粋。
≪ 新旧経営者の二重保証19% 地銀、事業承継で解除せず
金融庁は11日、中小企業の経営者が子どもなどに事業を承継した際に、地方銀行が旧経営者の個人保証を解除せず、新経営者と二重で保証を取っている割合が19・3%あったとする調査結果を公表した。減少傾向にあるがまだ改善の余地はあるとして、金融庁は円滑な事業承継に向け、過度に保証に依存しない取引を求めている。
調査は全国の地銀105行を対象に昨年11月に実施した。事業承継時に新旧経営者から二重に保証を取っていたケースは調査を始めた2016年度下期に46・2%あったが17年度下期には36・5%に減少。18年度上期は19・3%だった。
(共同通信 2019年4月11日) https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/407890 ≫
≪ 中小後継者、個人保証なしで=事業承継を促進-政府
政府は31日、中小企業の事業承継を促進するため、後継者に企業の借金の個人保証を求めない枠組みを整えると発表した。6月にまとめる成長戦略に盛り込み、2020年から実行に移す方針だ。
安倍晋三首相は同日、中小企業関係者の会合で「個人保証脱却・政策パッケージを政府与党一丸で速やかに実行する」と表明した。
新たな枠組みでは、政府系の商工中金は一定の財務条件などを満たす企業への融資を「原則無保証化」する。また、民間金融機関には個人保証に頼らない融資の拡充を要請。中小企業の資金繰りの透明性向上も支援する。
(時事通信ドットコム 2019年5月31日 https://www.jiji.com/jc/article?k=2019053101224&g=eco ≫
実際の現場でも、改善の様子が感じられます。
【事例1】 私は認定支援機関という立場で、中小企業の社長さんから依頼を受けて、リスケジュールの交渉・手続きに必要な経営改善計画書の策定支援をしたり、その計画の詳細を解説するためにバンクミーティングに同席することがしばしばあります。その際、社長さんが高齢で、リスケの途中で息子さんに社長交代するような場面もときどきあるのですが、そのような現場で、最近は、銀行さんのほうから率先して「そうですか。では社長交代の登記手続きを終えたら、金銭消費貸借契約書の連帯保証人の脱加入(変更)の手続きもしましょうね」 と言ってくれることが増えてきました。(以前よりは増えてきた、という意味です)
いまだに理解のない銀行も存在しますが、上記新聞記事のコピーなどを見せれば、考えを改めてくれることもあると思います。
世代交代すべきときは、心置きなくしましょう。
【事例2】 業績が本当に良くなってきている会社に対しては、代表者の個人保証さえいらない完全な無担保・無保証に切り替えてくれるケースも見かけるようになってきました。中には、5年前まで厳しい局面を迎えてリスケしてしていたのに、3年前にリスケ卒業、2年前に債務超過解消、黒字化、追加融資もOKになり、1年前にはさらに増収増益、有利子負債CF倍率が3倍以内に収まるまで財務体質が良くなり、今年、信金さんのほうから、「もう社長の個人保証も要りません。契約書もそう書き換えましょう」 と言って下さったケースも見ました。ちょっと泣けてきました。
※ ちなみに、不動産賃貸における連帯保証も改善(?)の動きがみられます。
最近では、保証会社しか使わない契約が全体の約半分を占めています。
保証会社と連帯保証人の両方を取られている契約(ひどいですね)は約2割。昔よりはだいぶ減りました。
連帯保証人のみの契約は約14%。 10年前はこれが50%を超えていたそうです。
ソースは日本賃貸住宅管理協会です。
猫


既にご存知の方も多いかと思いますが、2018年12月に発売された『決算書がまるごとわかる本』、ほぼ全てのページにわたって誤植がありました。これを重く受け止めた出版社と編集者と著者(私)は、1月までに校正作業を重ね、2月に改訂版が出ました。しかしこれは初版を購入して下さった読者様へのリコール用(交換用)として扱い、書店での販売はストップしています。本日現在、Amazonでも買えなくなっています。
出版社の当該ページは、ここです。
http://www.shinyusha.co.jp/special-topics/kessansho/
修正した誌面 (PDF。かなりのページ数におよぴます。買わなくても内容がわかりますね。誤植を除けば、読者の方々の評判は良かったのですが・・・)
http://www.shinyusha.co.jp/app/wp-content/uploads/2019/02/kessansho-new.pdf
以上、読者様を第一に考えた対処となりました。
購入してくださった皆様には、上記のとおり返品・交換ができることをお知らせすると共に、私なりの読者様向けのサービスとして、エラー本へのサインや、交換手続きのフォローなどをさせていただいております。
吉田猫次郎

すっかり間が空いてしまいました。
(FBやTwitterやメルマガもかなり更新をさぼっていました・・・)
この間、手が麻痺したり、真夜中に急患で運ばれたり、事務所を引っ越したり、いろいろありましたが、私は元気です。
これから徐々に投稿回数を増やしていきたいと思います。
吉田猫次郎