
では、大逆転できなかった残りの8割の倒産寸前会社は、一体どうなってしまうのでしょうか?
大丈夫です。絶望する必要はありません。
あくまでもウチの場合ですが、たとえどんな倒産寸前状態の末期症状(代位弁済や債権譲渡にはじまり、競売、差押など)に陥っても、そこから奇跡の逆転ができなくても、ほとんどの皆さんが、「自分の意思でしぶとく生き残っています」。
中には自分の意思で廃業を選択される方もおられますが、全体としては1割にも満たないでしょう。
多くは、(くどいようですが)「自分の意思で」、イバラの道をたくましく歩み続けています。
それについて、「ゾンビ企業だ!」「さっさと畳んでしまったほうがいい!」と考える部外者もいるでしょうが、
「ゾンビに近い状態でも生き残る」 という選択肢があったっていいじゃないですか。
それが「自分の意思」ならば。
障害を抱えたり、不治の病にかかっても、しぶとく生き残っている人間がいます。
それと同じです。
会社として、「手足をもがれた」に等しい状態になってしまっても、その後もしぶとく生き残り、最低限、家族の生活費ぐらいは捻出している会社も数多くあります。立派です。
長く辛抱しているうちに、いつかきっと 「いい風」 が吹いてくる。
それまでもちこたえて、銀行さんや専門家先生にとっくに見放された5年後、10年後、20年後に花開いたハッピーエンドな会社もありました。
先のことは誰でもわかりません。
一寸先は闇。
出口がいっこうに見えないかもしれません。
でも、タイトルに書いたように、先の先には、まだ先があります。
猫

以下、そのときの会話です。
猫 「条件変更(=リスケ)の貸出先は、相変わらず多いですか?」
信金 「はい。中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)が機能していた頃と比べると1割ほど減少しましたが、依然として高い水準にありますね・・・」
猫 「では、一度リスケしてしまった会社の、リスケ卒業についてはどのような状況ですか?」
信金 「残念ながら、一度リスケした会社は、その後も延長、再延長というケースのほうが多いですね・・・」
猫 「多いというのは、具体的には?」
信金 「例えば、ある支店では、昨年度リスケを承諾した貸出先が100件近くありましたが、そのうち、リスケを1年で脱却して元の約定弁済に戻すことができた件数は、ゼロでした・・・」
猫 「ぜ、ゼロですか・・・」
このように、リスケした会社が元の約定弁済を再開できるまで回復するのは、かなり厳しいと言えるでしょう。
これはべつに、リスケによって信用に傷がついたからではありません。
リスケしてもブラックリストには載りません。
業績が回復すれば(特にフリーキャッシュフローが回復し、債務償還年数を縮めることができ、かつ、債務超過解消に向けて着々と進行していれば)、金融機関は喜んで債務者区分を格上げし、真水の運転資金を融資してくれるようになります。
それができず、いつまでもリスケの延長、再延長とだらだら続いてしまうのは、どちらかといえば、金融機関に問題があるのではなく、その会社の「あり方」に問題があることのほうが多いと感じます。
残念ながら、私が日頃相談を受けている方々(ご存知のとおり、他所で「廃業したほうがいい」と言われたような重症患者さんが多く訪れます) の中でも、「リスケ卒業」に至る割合は、低いといわざるを得ません。
だいたい1割以上、2割以下といったところでしょうか。
残りの8割以上の会社は、リスケの延長か、もしくは代位弁済、債権譲渡、担保処分などの憂き目にあいながらも、しぶとく生き残っているような会社です。(ただ、そのような倒産寸前段階まで落ちて、他の専門家から自己破産したほうがいいと言われた後に、法的整理などを一切せず、不死鳥のごとく業績回復し急成長したすごい会社もあります。やはり1割以上、2割以下の割合で存在します。本当に奥が深いですね)
本当は、自助努力によって収益改善、フリーキャッシュフロー増大を目指すべきなのは言うまでもありません。
銀行に言われるまでもなく、全力で取り組みましょう。
それが実現すれば、単にリスケ卒業にとどまらず、思いがけないほど支援者が増えます。
ビジネスチャンスもそれに比例して増え、悪循環から好循環に転じます。
それを目指しましょう。
ただ、現実には、リスケからいつまでたっても脱却できない会社のほうが、リスケ中の企業の中では「多数派」です。
いくら努力してもそこから抜け出せないようなときは、少し気持ちをユルめて、休暇を取ったり、遊びに行ったり、普段読まないジャンルの本を読んだり、普段接しないタイプの人と交流を持ったりして、より広く、ニュートラルに、「あり方」を見直してみましょう。力を抜いて。目の前の脅威にとらわれることなく。
猫

今回は合宿形式ではなく、普通の安い勉強会です。
会場は温泉ホテルで、夜に宴会も開催しますが、勉強会とセットではなく、オプションになります。
勉強会だけ参加して、宴会に参加しないのも自由です。
宿泊も自由です。(料理が美味しく、日本海の夕陽が絶景で、目の前に海岸があり、大浴場も2つあり、その割には宿泊料が格安なので非常にお勧めです。庄内空港やJR鶴岡駅まで送迎もして下さいます)
東北方面の方も、それ以外の方も、よろしかったら是非ご参加下さい。
お申込みは、ホームページのイベント案内、またはメール、電話にて広く承ります。
テーマは、よく東京で開催しているのと同じ、「倒産を防ぐ」 です。
私は会場のホテルに1泊し、懇親会から翌朝の朝食まで、参加者の皆様とご一緒させていただきます。
猫

・ 昭和58年までは、出資法の上限金利が 「年109.5パーセント」 でした。
・ 昭和61年までは、 ,, 「年73パーセント」 でした。
・ 平成3年までは、 ,, 「年54.75パーセント」 でした。
・ 平成12年までは ,, 「年40.004パーセント」 でした。
・ そして平成12年の半ば頃から 「年29.2パーセント」 に引き下げられ、
・ 平成22年の貸金業法の大きな改正により、ダブルスタンダードが撤廃され、「20パーセント」 まで引き下げられて、現在に至っています。
我々債務者側の人間としては、素直に嬉しいですね。
反面、債権者側(貸し手側)としては、あまり嬉しくないことと思います。
これについての複雑な議論はここでは置いておきますが、正直なところ、債務者側である私も、
「ここまで上限金利が下がっていいの?」 と、余計な心配をしてしまうことが時々あります。
かつて、高金利の商工ローン最大手「SFCG」という会社がありました。
この会社は1990年代後半に急成長を遂げ、業界1位まで業績を伸ばしましたが、
平成19年頃から業績が急降下し、その数年後に破産し、現在は消滅しました。
私個人も、平成8年から19年までの11年間、SFCGからの借入や連帯保証に随分苦しみました。
そのSFCGの社長が、著書の中で、こんなことを書いていました。
「高金利はタクシーのようなものです。 誰もタクシー料金を高いという人はいないでしょう?」
(↑ 注: 原文引用ではなく、私の記憶で書いています)
確かに一理あると思います。
敵ながら、妙に納得してしまいました。
複雑な議論はここでは省略します。
ただ、妙に納得してしまった自分がいるのです。
「タクシーのように、たまに短距離を乗るだけなら(という条件つきで)、上限金利がもう少し高くてもべつに構わないんじゃないか?」 「リスクの高い商売なんだから」 と。
この思いは、平成17年頃にこの本を読んだときから、現在に至るまで、実のところ、あまり変わっていません。
つまり、高金利の貸金業者を「憎むべき敵」とか「悪人」のようには(あまり)思っていないのです。
戦ったこともありましたが、それは生きるとか死ぬとか、善とか悪とか、そんな次元ではなく、
自分が生き残るために、必要に迫られてやったに過ぎません。
月日が経ち、SFCGは消滅し、私は生き残りましたが、いろいろ、万感の思いです。
猫

聞けば、金融機関がリスケ交渉等のときに当然のように出してくる言葉(債務者区分が要注意先以下になりますよとか、リスケは1年間だけですよとか、経営改善計画には役員報酬カットや遊休資産処分なども盛り込んでくださいねとか・・・)の単語のひとつひとつが気になって気になって、精神衰弱気味になってしまったとのこと。
私はこう答えました。
「債務者区分は業績回復やリスケ解消などに応じて変動しますから心配いりません。今は格下げされても文句言えません。リスケの1年間は、まだありがたいと思ったほうがいいですよ。最近は半年で区切られることも多くなってきましたから。それに、1年間猶予されるのですから、1年間必死に自助努力すればいいのです。それでうまく結果が出ればリスケ卒業、横ばいだったらリスケ延長の粘り強い交渉の余地あり、今より業績悪化してしまったときはリスケによる解決を諦めて代位弁済やその他の整理による生き残り策を考えればいい。方針を固定化せず、1年先の結果を見てから柔軟に決めはほうがむしろ良いと思います。でないと、どんどん道が塞がってしまいますよ。」
「また、金融機関が当たり前のように言ってくる言葉の中には、あくまでも最悪時はこうなりますよと前置きしているにすぎない言葉も少なくありません。まだ最悪の事態には程遠いのですから、あまり真正面からその単語を受け止めず、サラッと聞き流して、頭の片隅にとどめておいたほうがいい場合もよくあります。そうしないと、疲れちゃいますよ。銀行に潰される前に、あなた自身が精神的に崩壊して自滅しちゃいますよ!」
「野球と同じです。毎回、ピッチャーの投げる球をフルスイングしても、きっと勝てないでしょう?あるときは見送り、あるときはバントし、またあるときはファウルで打ち流すこともあるでしょう?」
と。
「交渉術」というのは、本を読んで学ぶのも大いに結構ですが、
本以外にも、どんなことからも学ぶことはできます。
ヒントはそこらじゅうにあるのです。
「下手の長考、休むに似たり」 という諺があります。
考えすぎて精神が疲労して、かえって混乱してしまったときは、気分転換に野球マンガでも読んだほうがよっぽどマシです。そういう気持ちの切り替えができますように。
猫