
1.借りたカネは返すべきです。でも、独立して事業を営んでいれば、成功も失敗もあります。失敗すると、多くは借金が返済できなくなります。その現実を受け入れなければなりません。
2.独立したときの成功率は、プロ野球選手の打率より低いかもしれません。つまり、相当鍛えた人でも、7割はアウトで終わるかもしれません。その現実を受け入れなければなりません。
3.事業に失敗して借金が返済できなくなると、必ず、何かしらのペナルティを受けます。当然ですね。それも受け入れなくてはなりません。
4.しかし、そのペナルティ規定の中に、「借金返済できない者は死刑」 などという条文はありません。
こんなことは子供でもわかりますね。だから生きてていいんです。死んじゃいけません。
5.法治国家です。借金を返せなくなった(=契約不履行など)際のペナルティも、法で定められています。期限の利益の喪失による一括請求とか、損害金が加算されるとか、担保権実行とか、財産処分とか、差押とか。 最悪の場合でも、それを受け入れればいいだけのことです。それ以上の罰(違法な取立て、暴力、監禁など)を受ける必要はありません。
6.最悪の事態(ほとんどの場合、それは「強制執行」か「破産手続きによる財産処分」といった民事レベルであり、刑事事件に発展することはないでしょう)に陥っても、やはり法治国家のルールは生きています。
というのは、法律はピラミッド構造をしていて、ピラミッドの頂点には「憲法」がある。 差押について定めているのは民事執行法です。期限の利益や損害金や連帯保証責任などは民法です。いずれも憲法より下にあり、憲法で保障されている「基本的人権」「生存権」「幸福追求権」「職業選択の自由」などは守られます。 (差押されても意外とヘーキです。経験者は語る)
7.そうです。失敗しても、あなたさえその気なら、何度でもやり直せるのです。
8.それはカッコ悪いかもしれません。でも、カッコ悪く生き残るその姿は、私のような者にはカッコ良く見えます。
このように、複雑な問題はできるだけ単純化して、今すぐ解決策が出なくてもいいから、気長に、多少ユルい姿勢で、頑張りましょう。
猫

もうひとつ、昔から全く変わっていない傾向があります。
それは、借金苦で自ら命を絶った方のほとんどが、負債総額で100万~1億円未満だということです。
10年前も今も、これは変わりません。
まれに2億、3億の遺族の方も相談に来られますが、5億円以上になると皆無です。
一番多い層は、だいたい負債総額3000万円~1億未満のあたりです。
これは何を意味するのか?
私は遺族からの相談のほかにも、自殺未遂して奇跡的に生き残った中小零細企業の経営者さんから相談を受けたり、遺書まで書いたものの実行まで踏み切れなかった未遂未満の社長さんからの相談を受けることもしばしばあります。そして、彼らもまた、負債総額は「1億円未満」がほとんどなのです。2-3億級はごくわずか。5億以上は皆無です。
未遂や未遂未満の社長さんにお聞きしてみると、やはり想像どおり、「保険」 というのが出てきます。
つまり、
「自分が死ねば、保険金で借金返済できると思った」 (本当は死にたくない)
という気持ちです。
私も同様の経験がありますので、これについては痛いほどわかります。
生命保険に加入していれば、死ねばウン千万円くらいの保険金が出ることが多いでしょう。
(但し契約3年未満は出ないのが普通)
さらに、住宅ローンにいたっては、「団信(団体信用生命保険)」がありますので、団信で住宅ローンの残債を完済することができます。
これが変な気持ちを起こさせるのです。
ところが一方、借金の総額が5億円、10億円、100億円といったケタ違いな高額になると、生命保険ではまず返しきれません。金額が大きすぎるので、「自ら命を絶って、保険金で借金を返そう」 などと考えても無駄です。
このような高額債務者になると、実にあっけらかんとしています。
「家なんか手放してもいい。また儲けて買えばいい」
「いちど失敗しても、二度目があるさ」
「返したくても返せないんじゃ。これ以上、自分にはどうにもできん。(債権者さん、差押でも何でも好きなようにやってくれ。わしが悪いんじゃから、腹は括っておる)」
と。
私のところには、年に1人くらい、負債総額100億円を超える大物(?)が相談に来られます。
彼らは、必ずと言っていいほど、元気です。
少なくとも、生きるとか死ぬとか、そういう次元で相談に来られる方はいません。
いっぽう、これまた年に1人くらい、500万円にも満たない借金で、「自分には500万円も借金があります。もう死ぬしかないのでしょうか・・・?」 と思い詰めた相談をされる方がいます。表情は暗く、声のトーンにも覇気が感じられません。この世の終りのような悲壮感を抱えて相談に来られます。
考えさせられますね。
私はときどき、100億円の借金よりも、500万円の借金のほうが重いんじゃないかと思うことがあります。
猫

11月の勉強会は、11/11中野と、11/22-23山形の2本だけになりそうです。
11/11中野は、おかげさまで予約一杯。
11/22-23山形(湯野浜温泉)は、本日現在、18名の予約を頂いております。

一昔前のように、専用掲示板を開設したり、他所の団体の活動に参加したり、講演したりという場面はめっきり減りました。
自殺防止団体や遺族ケアの団体(NPOや任意団体など)との交流は今でもありますが、良好な関係を継続しながら、少し距離を置いているというのが正直なところです。
というのは、私が強いのは「借金自殺を防ぐこと」だけであって(これだけは人より自信がある)、パワハラ、いじめ、病気などについては全くの素人ですし、また遺族ケアについても、残された借金をどうするかといった技術的なことならいくらでも相談に乗れますが、「遺族の心のケア」的なものは自信がないからです。
さて、最近の活動状況をさしさわりのない範囲で。
全くPR活動をしていないので、その手の相談はさほど多くありません。
でも、今でもコンスタントにだいたい月5-6人の遺族相談を受けています。
相談内容は、「私の亡くなった〇〇の連帯保証人になっていて・・・」 というのが最も多く、次いで「〇〇が亡くなった後、借金があることが判明しました。私は保証人ではないのに、法定相続人として借金を返済しろと、金融機関から催告書が来ました」 といったものが多いです。 あとは、「社長亡き後、私がこの会社を継ぐべきでしょうか?」 といった事業承継的な相談や、「今後、遺された私たちはどうやって生活すればいいのでしょうか?」 といった生活保護的な相談も少なくありません。
いずれも深刻ですが、解決方法は必ずあります。
遺族の方と少し打ち解けてくると、
「生きているうちに相談に来てくれれば、死なずに済んだのに・・・」 という言葉が遺族の方からよく出てきます。
本当にそのとおりだと思います。
(つづく)
猫