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吉田猫次郎のブログ(2005年~2020年分)

事業再生コンサルタント・吉田猫次郎の旧ブログです。恥ずかしいけど残しておきます。2021年からは別の場所に移転しました。

 

[長文] 借金返済不能+浪費ギャンブルの、人間のクズ?からの相談


Category: 借金苦による自殺問題   Tags: ---
<起>

ここ数ヶ月、こんな人から相談を受けています。
仮にこの人の名前を「鈴木さん」とします。


[基本情報]

・地方で製造業を自営。2代目。年齢40代。
・資産は住宅ローンつきのマイホームのみ。
・負債は銀行や事業資金で借りたカードローン類など、計4000万円ほど。
・中国に生産拠点がシフトした影響で、業績はここ20年ほど悪化の一途。現在は年商4000万円前後。
・いくら努力しても、現状のままでは業績回復は見込めない。かといって、新規事業を開拓するには資金もないし、長い間この業界一筋でやってきたのであまり潰しもきかない。
・1年前、弁護士に個人再生手続きを依頼したことがあるが、予想以上に収益が悪化したため、やはり個人再生は無理だろうと判断され、かといって自己破産にも抵抗があった(守りたいものが多かった)ため、辞任されてしまった。
・ここ数ヶ月は借金の取立てを毎日のように受けている。
・既に離婚して、ひとりぐらし。


まあ、よくある話ですね。

私は数字をじっくり見させて頂いて、こうアドバイスしました。

「1.教科書的な正論としては、やはり「自己破産したほうが合理的でいい!」という答えになるでしょうね。理由は、資産より負債のほうが倍以上多いこと。業績低迷でしかも構造不況業種のため回復の可能性が低く、今の稼ぎではとてもまともな借入金返済ができないこと。これだけでじゅうぶん自己破産する理由になります。破産した後はサラリーマンに転職するのが無難でしょうが、どうしても職探しが難しければ、最悪の場合、生活保護という手段もあります。生活保護は借金が残ったままだとなかなか受けさせてもらえないので、最悪時の究極の生き残り策は自己破産と生活保護のセット(?)のような形となるでしょう。これが最もあなたにとって負担の少ない、経済合理性の高い手段でしょう。必要なら自己破産を安く請け負ってくれる弁護士さんをいつでも紹介しますよ。」

「2.でも、合理的な解決策が唯一の選択肢とは限りません。「合理的じゃなくてもいい、傷を負ってもいい、とにかく商売を続けたいんだ!家も残しておきたいんだ!」とお考えなら、傷や遠回りを承知で、自己破産もせず生活保護も受けずに、泥臭いやり方で商売を継続していくことができます。・・・あなたの場合、数字と現場の様子から見て、仕入れ代金と住宅ローンだけならギリギリ何とか払えるでしょう。でも銀行の事業資金の借入金やカードローン類は現状では到底返済できないでしょう。そこで、泥臭いやり方としては、法律手続きに一切頼らず、自己責任において、借入金返済を一切停止して、うるさい取立てに耐え、だけど仕入れ支払いは最優先して、本業に精を出すこと。そしてそうしながら、資金負担のかからない新規事業をじっくり考えて、2本目、3本目の柱を構築すること。とことん「悪あがき」するのです。そしてその結果、うまく収入が増えたら、そのときは遅れていた借金を返済する。でもいくら努力しても収入が増えるどころか減ってしまったら、そのときは再度考え直して自己破産してもいい。自己破産はいつでもできます。その前に、苦痛を覚悟でできるだけのことをするのです。」

「1と2、あなたはどっちを選びますか?2の方法は相当ツライですよ。主役はあなたです。どっちを選択するかも、主役のあなたが決めて下さい。」・・・と。


熟考の結果、彼は2の方法を選びました。
今年7月のことです。

しかし、8月に入ってから、事態は良からぬ方向に向かっていきました。
借入金返済どころか、今月末は仕入れ代金も払えそうにないというのです。

おかしい。数字を吟味した限りでは、そんなはずはない。
考えられることは、予想以上に売上(入金ベース)が激しく落ちているか、さもなくば、ここに載っていない簿外債務があるか・・・?

でも私は、あまり余計な詮索をせずに、日々の乗り切り方を中心にメールで受け答えしていました。
しばらくの間は・・・。


-----------------------------------------------------
<承>

鈴木さんは、結局、8月末の仕入れ代金の支払いができませんでした。
借金の返済ももちろんできないままです。
さらに、親戚から仕入れ支払いのために借りた100万円も返済の目処が立たないとのこと。
要するにスッカラカンの状態です。
そんな状態になって、8月下旬から相談の回数が劇的に増えてきました。

「もう死にたいです」
「心が折れそうです」

という言葉も、増えてきました。

もうどこからも借入できる状態ではないので(既に1年以上前にブラックになっている)、借りて資金調達しろとはもちろん言えません。

仕入れ代金が支払えないとなると、もう掛けでは仕入れできなくなるので、現金仕入れしか手立てがなくなります。でも、その現金もありません。

八方塞がりです。

それにしても、なぜこうなってしまったのでしょうか?

私が相談を受け始めた当時は、仕入れ支払いくらいはできたはずなのに。
返済は極限まで止めているし、特に贅沢をしている様子もないのに。

9月4日、土曜日の夕方、こんな携帯メールが来ました。

「今、心が折れてしまっています。お金も、もうありません。現実的に商売ができなくなる可能性があります。どうしたらいいでしょうか?」

私は携帯でこう返信しました。

「今、パソコンで過去の数字をおさらいしてみましたが、どうも計算が合いません。私が相談を受け始めた当初と比べて、だいぶ事情が変わってきているようですね? 何かあったのでしょうか?収益が予想以上に落ちた?売掛金が焦げ付いた?借金が増えた?突発的な支出が発生した? ・・・いずれにしても、商売を続けて家を守りたいなら、苦しいこの現実に耐えながら、仕入れ優先、借金返済後回しを徹底しなければなりません。 また同時に、見方を変えて、そもそもこの仕事は商売として成り立っているのか?成り立っていないとすれば、一度リセットして転職すべきではないか?と考え直すことも必要ではないかと思います。 私は鈴木さんが希望する方向に合わせて全面的にお手伝いしますよ。商売を続けたければそれを支援します。リセットして楽になりたければいつでも弁護士を紹介します。何度もいうように、主役は鈴木さんです。」


----------------------------------------------------------
<転>

9月4日、鈴木さんはとうとう、本当のことを打ち明けてくれました。

「夜分遅くにすみません、正直に言います実は・・・仕事が上手くいかない事と離婚などが重なってストレスがとてつもなく重くなり現実逃避したく、遊び回ってお金を使ってしまいました。最低です。やけくそになっています。こんな人間は世の中から消えてなくなる方がいいのかもしれません。つらいです。本来なら経営は何とか回していけるのですが自分の弱さに負けてしまっています。どうか見捨てないで下さいお願いします。商売だけはどうしても続けたいです。助けて下さい。」 (ほぼ原文のまま)

聞けば、せっかく親戚から仕入れに支払いのために借りた100万円も、短期間のうちにギャンブル等で使い切ってしまったそうです。


皆さんはこれを聞いてどう思いますか?

事実だけ並べ立てれば、離婚、支払不能、借金返済不能、ギャンブルによる浪費・・・ですよ。
普通の感覚の人なら、聞いてて嫌悪感を覚えることでしょう。
「あんたは最低だ」「人間のクズだ」と。

でも、私にはあまりそう思えませんでした。


私はこうメールで答えました。

「正直に書いてくれてホッとしました。みんな多かれ少なかれ、あやまちや遠回り、ガス抜きをしながら精神の均衡を保っています。いいんですそれで。日本国憲法でも幸福追求権は保障されています。・・・今後の対策は、後ほど改めて仕切り直しましょう。」


私の好きな言葉に、「事実より、真実を」というのがあります。



----------------------------------------
<結・・・?>

これから鈴木さんがどのような結末を迎えるのか、私にもわかりません。
ただ、私は鈴木さんの味方です。
どんな方向に進むにしても、助言を惜しまず続けたいと思っています。

もちろん、鈴木さんのやったこと(事実)は決して誉められるものではありません。弱い。情けない。周囲の人にもかなり迷惑をかけている。けしからんヤツです。

でも私は裁判官でも評論家でもありません。被害者でもありません。
あまり彼を非難する気にはなれません。

誰だって弱いです。私はいろいろ弱い人を知っています。医者や弁護士や政治家や教員や優良企業の社長さんでも、仕事や家庭のストレスが重なり浮気や犯罪スレスレのことをやっている人を何人も知っています。だから悪いことをしてもいいんだよとはもちろん思いませんが、罪を罰するのは司法や神様の仕事であって、私の仕事ではありません。私はむしろ逆に、寛容を求めたいと思っています。(もちろん被害者側だったら怒ることもありますが・・・)

これを読んだ皆さんの中には、鈴木さんのことを救いようのないクズだと思う方もいるかもしれません。それはそれで当然でしょう。でも私は応援したい。だからあえて、本人特定できないように少し内容をアレンジしつつも、このブログ記事を書いています。 出口の見えない経営不振や孤独と戦っている彼に、一人でも共感者がいることを感じてもらうために。


というわけで、<結> はこれから始まります。

人生はドラマです。主役はあなたです。
せっかくなら、壮絶なドラマを作って下さい。



猫@40分間で一気に書いた

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プロフィール

吉田猫次郎

Author:吉田猫次郎
【NEKO-KEN】
中小・零細企業・自営業向け事業再生コンサルタント。
事務所所在地は、東京都三鷹市下連雀3-31-4-206 (2021年4月現在)
経済産業省認定・経営革新等認定支援機関(認定支援機関)。
2003年開業。末期症状の会社の倒産回避(生き残りのための応急処置)から、原因究明、デューデリジェンス、再生スキーム策定、金融機関向け経営改善計画策定支援、資金繰り改善、PL改善(黒字化)、実行支援、事業承継、補助金、最後の出口へのお手伝いに至るまで、事業再生コンサルタントとしては一通りの経験と実績があります。
企業理念は「ヒト・モノ・カネの再生」。


【吉田猫次郎】
本名よしかわひろふみ。(株)NEKO-KEN代表取締役、CTP認定事業再生士、認定支援機関、著述業、ほか。
1968年東京生、乙女座、A型、申年、五黄土星。
著書13冊。講演300回以上。テレビ出演15回くらい。
20代のサラリーマン時代に高額の連帯保証人になり、その後、1998-2000年の脱サラ時に、借金苦・倒産危機で考えられる最悪の事態をほぼ全て体験したことがある(高利、多重、ヤミ金、怖い取立て、手形不渡り、ブラックリスト、強制執行など・・・だが自己破産はせず)。その体験記を、2001年に猫次郎と名乗ってホームページに公開したところ、予想外にヒットしてしまい、2003年に書籍化。以後、事業再生コンサルタントに転身し現在に至る。
最近はスポーツらしいこともするようになり、2012年(44歳)から現在までにトライアスロンに12回出場、全て完走。フルマラソンも2回出場、2回完走。
嫌いな食べ物は、ダイコンと漬物。特に「たくあん」が大の苦手で、あれを食うのは、どの拷問よりも苦痛だと思う。
2020年8月に脳梗塞発症。3週間ほど入院。しかし現在こうして文章を書いているし、手足も自由に動く。

★ 「相談」をご希望の方は、ホームページのほうに申込方法等を記載していますのでご覧下さい。有料と無料があります。お急ぎの方はお電話でもOKです。 → 吉田猫次郎ホームページ

★ 取材、講演、執筆依頼は、直接メールまたはお電話下さい。 ooneko@nekojiro.net TEL(0422)46-9480

 
 
 
 
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