
必ず回復します。
必ずです。
但し、都合よくとらえてはいけません。
信用は、自動的に回復するわけではありません。
本人の努力や、知識や、知恵次第で、いつか回復するのもなのです。
ここでは、その「知識」「知恵」について取り上げます。
いくら実直に働き続けても、一度傷ついた信用、とりわけ金融系の信用は、「そのままでは」「なかなか」回復しませんから。
具体的には、
・自己破産した場合:
CICやJICCの事故情報は、5年ほど残ります。(5年経てば急速に消えていく)
全銀協の信用情報は「官報に載った情報」として10年残ります。
・任意整理や、自力交渉による和解や、長期間遅れて完済した場合など:
CICと全銀協は、完済後から数えて5年間残ります。(5年経てば急速に消えていく)
JICCは完済後1年で消えます。(どんな形であれ、契約完了=完済と考えて概ね間違っていない)
・未解決のまま、返さず放置している場合:
CIC、JICC、ともに、「ずっと消えない」 ことになっています。(但し実際の現場では例外もよく見かける)
全銀協は、指定信用情報機関ではないので、思っているより早く消える傾向にあります。
昔、私が「ブラックリストなんて怖くない」という本を書いた11年前は、「最後に登録されてから5年」で事故情報(ブラック)が消えるという基準だったので、借金を返さず放置している人でもいつかはブラックが自然消滅して信用が回復したものですが、
2010年に貸金業法が改正し、JICとJICCが「指定信用情報機関」になってからは、この基準が、
「契約が完了して5年」 に変わったのです。
つまり、契約が完了しない限り、ブラックは消えないことになったのです。
ここでひとつ、画像をお見せしましょう。
これがブラックリストです。
(注: ブラックリストとはいわゆる俗称です。金融系の信用情報機関に、長期延滞や債務整理などの事故情報が載っていることを「異動情報」とか「異参サ情報」などといいますが、それが載っている状態のことを俗にブラックと呼んでいるだけです)
これはご本人から同意を得て掲載していますが、デリケートな情報なので、デリケートな部分は黒く塗りつぶしています。ご了承ください。
少し解説します。この信用情報はJICCから平成25年4月に開示したものです。

[解説]
右端に書かれている「異参サ」というのが、いわゆる事故情報、俗にいうブラックです。
4件載っていますね。
このように、「ブラックリスト」 とひとくくりに載るわけではなく、貸金業者別に、日付や内容などが事実のまま淡々と書かれます。
JICCの場合、完済すれば「異動情報」(ブラック)が1年で消え、表の下のほうに移り、「完済情報」として記載され直します。
完済後は5年間記録が残りますが、それは決してブラックではありません。
繰り返しますが、ここでいう「完済」とは、何も額面通りの完済とは限りません。交渉して元利の一部をまけてもらって和解しても完済。弁護士が介入したうえで整理して完済しても、完済です。
では、完済しない場合、この人はどうなってしまうのでしょうか?
表をもう一度見てみましょう。
「異参サ発生日」の日付が載っていますが、これはあまりアテになりません。
それよりも、表の真ん中よりやや右側にある「入金日」と「残高」のほうが重要です。
それと、自分で自分の返済記録や督促状などを読み返して、「最後に返済した日はいつか?」を再確認することも重要です。
信用情報に記載されている「入金日」が、必ずしも「最後に返済した日」と一致するとは限らないからです。
(ちなみに、画像の人は、平成1x年に裁判や調停をしていました。つまり、法律用語でいうとことろの「債務名義」を取られていました。債務名義を取られると、借金の消滅時効は「10年」になります。どこから数えて10年かというと、判決が確定した日から10年というのが基本ですが、その後、1円でも返済したり債務承認したりすると、そこから数えて10年になります。)
どちらにせよ、「返さないまま」、「何も手を打たないまま」だと、10年経っても20年経っても異動情報は消えないと思ったほうがいいでしょう。
逆にいえば、何らかの手を打てば、異動情報が消える日はグッと早くなります。
事実、この画像の人は、平成25年4月までこのように4件もブラックが載ったままでしたが、3年半ほど経った現在は、4つともすべて消えています。(どうやって消したかは後日改めて解説します)
このような状況の中で、より早くブラックを消す方法は、ざっと次の数通りです。
1. 完済する。(ややマニアックな一例として、元金100万円、遅延損害金80万円、計180万円の残債を、事業の失敗で4年間返せないままでいたある方が、弁護士を介入した交渉で、150万円債務免除され、30万円だけ返すという条件で和解し、ただちに30万円振り込んだところ、数日後には「完済」扱いになり、異動情報が消え、完済情報に変わったという方もいました。)
2. 自己破産する。(自己破産すれば、CICとJICCのブラックは5年で消え、とりあえずクレジットカードや車のローンなどは組めるようになる。)
3. 消滅時効の援用をする。(消滅時効の援用が成功すれば、契約が完了したことになるというか、無かったことになると解される? ので、まあこのへんは法律家の先生に詳しく聞いてもらったほうがいいが、とにかくひとつの事実として、援用後にJICCもCICも異動情報が消えたという証言があり、その現物もコピーをもらったことがある。但し、すぐに綺麗さっぱりブラックが消えた人と、その後5年間異動情報が残った人の両方がいて、そのあたりの見極めはマニアック過ぎるのでそのうち暇があったらわかる範囲で解説したいと思います)
以上、JICCの場合でした。
CICや全銀協の信用情報の基準は、またちょっと違います。
次回以降に解説したいと思います。
このように、ブラックリストは決してブラックボックスではありません。
いつ、いくら、誰が、どこに、どのように等、登録の基準は明確です。
消えるかどうかの基準も明確です。
また、自分の信用情報は、自分で開示請求できます。(他人は無断では開示できません)
心配な方や、早くブラックを消すために知恵を絞りたい方は、まず最初の一歩として、
全銀協、CIC、JICCの3つの信用情報機関に、開示請求しましょう。
窓口開示も受け付けていますし(手数料500円)、
郵送やネット申込も受け付けています。
詳しくは、各信用情報機関のHPを熟読してみましょう。
つづく
猫

さて、ここで新たに、「ブラックリストは怖くない」 というカテゴリーを立ち上げたいと思います。
思えば11年半前。2005年春に、私は 『ブラックリストなんて怖くない』 という本を執筆、宝島社より出版したことがありました。
これは初版1万部が1年以内に完売しましたが、なぜか増刷には至らず、1万部ポッキリで終わってしまいました。
以後2-3年間、Amazonの中古市場でプレミアがつき、1万円前後で取引されていたこともありました。
当時の私は、週刊誌やR25などで「日本で唯一のブラックリスト研究家」「日本一のブラック博士」などと紹介され、自分でもそれなりに詳しいつもり・・・でした。
しかし、それも今は昔。
11年以上も経った今では、この本は、何の価値もありません。
たまに古本屋で売られているのを見かけますが、100円の価値もありませんので買わないほうがいいと思います。
そのくらい、この11年間で、「ブラックリスト」の仕組みが変わってしまったのです。
その節目は、2010年6月の「改正貸金業法」完全施行でした。
貸金業法の改正で、信用情報機関のうちCICとJICCの2つが「指定信用情報機関」になりました。
それに伴い、情報登録の基準もいくつか変更されたのです。
また、貸金業法改正の少し前に、信用情報機関の統廃合の動きも見られました。
それまでは、全国銀行個人信用情報センター(銀行系)と、CIC(クレジット)と、全情連系列の33の情報センター(貸金業者系)と、CCB(貸金業者系だが銀行系もクレジット系も加盟している業界横断型)と、テラネット(やはり貸金業者系だが銀行系もクレジット系も加盟している業界横断型)の、計5系統の信用情報機関がありました。
しかし、2010年の法改正の少し前から、貸金業者系の信用情報機関が大きく組織再編。全情連の33か所の情報センターがテラネットに事業承継を委ねる(?)という形で、新たな組織として「日本信用情報機構(JICC)」が出来ました。同じころ、CCBが日本信用情報機構に吸収合併されました。
このような経緯で、現在では、個人の信用情報機関は3団体から成っています。
銀行系 - 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
クレジット系 - シー・アイ・シー (CIC)
貸金業者系 - 日本信用情報機構 (JICC)
この3つです。
この3つさえ押さえておけば、ブラックリストの謎は解けます。
「私はブラックリストに載っているの?」 という疑問も、この3つの信用情報機関にあなた自身が開示請求すれば、事実が正確にわかります。(但しその事実というのは、あくまで「ブラックリストに載っているか?どう載っているか?」に関する事実が正確にわかるだけであり、「いくら借金があるか?最後に返済したのはいつなのか?最後に債務整理したのはいつなのか?」等といった個別の情報は必ずしも正確に載っているとは限りません。まあそのへんが奥の深いところなのですが・・・)
つづく
猫